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ユダが約束の場所に到着した時には既にシンはその場にいた。
湖畔に佇み何をするでもなくただじっと湖面に映る自分の姿を眺めている姿は美しく、そして同時に触れたら消えてしまいそうなほど儚かった。
その姿は初めて会った時のシンよりも脆く見えた。現在はユダの生気を受けてあの頃とは比べものにならないくらい元気になってるというのに。
「シ――!?」
声を掛けようとして思わず息を呑んだ。湖面を眺めるシンの瞳から透明な雫がゆっくりと頬を伝って流れ落ちていくのが見えたからだ。
ポタ、と地面に吸い込まれた涙はあとからあとからシンの瞳から溢れて落ちていく。
その唇がかすかに動いた。たった2文字。言葉にはならなかったがユダはそれが己の名前だということを見逃さなかった。
「シン!!」
慌てて駆け寄り背後からシンを抱きしめた。
「っ!?」
余程油断していたのだろう。普段ならば気配に聡いシンが抱きしめられるまでユダの存在に気付いていなかったらしい。驚いて身を捩るが拘束する腕がそれを許さない。己の身体に回された腕に手を触れ、その体温を確かめて安心したように抵抗が止んだ。
「ユダ……?」
「すまない。遅くなった」
「来てくれたのですか…?」
「当たり前じゃないか。約束しただろう」
「そう、ですね。約束してました」
そう言ってふふっと笑ったシンの身体を反転させ正面からシンを抱きしめる。涙に濡れた頬を指で拭い少し赤くなった瞼に口づけを落とせば頬を染めて恥じらう。その姿に、あぁやはり好きだなと認識を新たにした。先ほどの女性がどれほど自分に媚びてみせようとも欠片も動くことのなかったユダの理性はシンが相手だとこうも簡単に揺れるのかと、我ながら正直な自分に呆れてしまう。だが仕方ない。シンが可愛いのが悪いのだ。
両の瞼に口づけ、すっかり冷えてしまった頬にも口づけ、そして赤く色づく唇にも口づけを落として冷え切っていたシンの身体がユダの腕でぬくもりを取り戻した頃になってようやくシンが口を開いた。
「何故泣いていた?」
「…すみません。待ち合わせの時間になってもユダがいなかったから少しだけ不安になってしまったみたいです。貴方はやはりあちらの世界を選ぶんじゃないかって」
「馬鹿なことを」
ルカが「シンが寂しがりやだ」と言ったのはこういうことか。シンは驚くほど自分に自信がない。複雑な血統がそうさせているのだとは分かっているが、これほど愛を伝えているユダがまだシンから離れていくと思っていることには正直驚いた。
これ以上どう伝えればいいのだろうか。やはり身体に教え込ませるしかないのだろうか。そうすればユダがどれだけシンを愛しているのか十分に伝えることができるだろう。それこそもういらないと言う程度には想いを注ぐつもりだ。心も身体も重ねてしまえばシンが不安に思うことなどなくなるだろう。
だがそれにはまだシンの了承が得られていないのだ。
想いは通じている。身体も、それこそ繋げていないだけで恋人同士の営みとしてのあれこれは行っているのだが、どうしても最後までは進めていない。
人間だった頃は聖職者を目指していたシンの倫理観がどうしても最後の一線を超えることが許せないのだろう。実際の聖職者が言葉にするのも憚れるような淫蕩な日々を過ごしていることを知らないシンならではの潔癖さ故である。
勿論その慎まし過ぎる貞淑さもユダにとって喜ばしいことなのは間違いないのだが。
「遅刻をしたのは俺が悪かった。もっと早く来たかったのだが思わぬ邪魔が……否、言い訳するのは格好悪いな。お前を泣かせるつもりはなかったんだ」
「ユダのせいではないんです。私が勝手に不安になっただけです」
「だが、俺が原因だろう。罰は甘んじて受けよう。何でもするから許してくれないか」
「何でも…ですか」
「ああ」
可愛い恋人が不安を抱いているならどんな手を使ってもそれを解消してあげたいと思うのは惚れた弱みだと分かっているが、ユダにはそれ以外にどうすればよいか分からなかった。
自己主張が弱すぎるシンだからこうでも言わなければ何も言わずに一人で耐えてしまうと思ったのだが、この発言はユダにとって予想以上の僥倖をもたらした。
「それなら……」
少し不安そうに、だがどこか強い意志を秘めた瞳がユダを見上げる。普段よりほんの少し濃く見える黄金の瞳は見覚えがあった。生気提供という情事の際にシンが見せる甘い色だ。
――私を抱いてくれませんか――
シンから告げられた言葉はユダにとって罰というより最上級のご褒美だった。
断る理由はない。
◇◆◇ ◇◆◇
柔らかな草の上にシンの身体を横たえる。
初めての場所が外というのはどうかと思わなくもなかったが、そもそも今まで行ってきたあれもこれも全部この場所なのだから今更だろう。
先程よりも近くなった頬を撫で唇を親指でなぞればぞくりと背筋を震わせる感度の良さ。それを教えたのは自分だと思えば何とも言えない満足感が胸に溢れてくる。
「いいのか?」とは聞かない。ずっと我慢していたのだ。シンを怯えさせないように努めて紳士的に振る舞ってはいたものの幾度組み敷いてしまおうと思ったか分からない。
夢の中で何度その身体を暴いただろう、どれだけ欲望を注いだだろう。既に数えることはやめた。目の前の極上の獲物が欲しくて暴れそうになる身体をどれだけの自制心で抑え込んでいたことか。最終的には手に入れるつもりだったから我慢したのだ。そのチャンスが目の前にあるのに迂闊な一言で台無しにするつもりはユダにはなかった。
そしてどれだけ拒まれても今更引くことはできそうにない。
逸る心を押さえながら服の釦を外していく。素肌をほとんど見せない黒い衣服の襟元から覗くのはいっそ不健康にも見える白磁の肌。
口づけて軽く吸えば痕が残る。まるで未踏の新雪を踏み荒らしていくようで背徳感と征服欲が堪らない。
シンに怯えは見られない。甘く潤んだ瞳には未知への恐怖とそれを上回る期待。昨日までのシンとは明らかに違う。
たった一日の間に何があったのか。気になるけれどそれを確認するのは今ではない。
「シン」
「ユダ…」
口づけを誘えば応えるように瞳を閉じた。甘く柔らかな唇を堪能し、舌を絡めて深くまで蹂躙する。敏感な身体はそれだけで顕著な反応を示す。白い肌はうっすらと上気し、快楽に染まった身体はどこに触れても甘い声を上げた。
シンの身体はどこまでも従順だった。流石に下肢に手が伸びた時には動揺したが、それもすぐ快楽に溶けて消えた。おそらく自身でも触れたことがないであろう箇所に指を這わせ1本、また1本と丁寧に解していき、ようやく準備が出来た頃にはシンは快楽と羞恥で抵抗する気力すらないようだった。
ぐったりと沈んだシンの足を持ち上げ、己の怒張を秘孔に当てる。先ほどまでユダの指を3本咥えていたそこはひくひくと淫らに動いてユダを誘っている。
「――行くぞ」
ぐい、と腰を突き入れれば解されたそこは多少の抵抗の後でずるりと怒張の先端部分を呑み込んだ。傷つけないように少しずつ奥へと推し進める。未通の秘孔はやはりきついがそれ以上に熱く絡みついてくる。
「――ぁっ、あぁ…っ」
シンは大きく背を反らして衝撃に耐えていた。痛みは感じていないようなのが幸いだ。最奥まで届いたところで動きを止める。
「つらいか?」
ユダの問いかけにシンは首を振る。言葉を発するだけの余裕はまだないらしい。だがこちらもいつまでも待てるほど余裕があるわけではなかった。シンの身体はどこまでもユダに従順になっているらしく、抽挿を開始すれば甘い吐息が漏れるのは時間の問題だった。
日々分け与えていた生気によってユダに馴染んでいたのだろう。ユダにとってもシンの身体は極上の一言に尽きた。生気だけでなく身体の相性も良いのならば何の問題もない。
何しろようやく想い人と身体を繋げたのだ。もっと味わいたいし、もっと啼かせたい。この行為で得られる最上級の快感をシンに味わってもらいたい。
そしてできることなら溺れてもらいたいし溺れたい。
最中に見つけたシンの感じる箇所を重点的に責め、ギリギリまで引き抜いては奥深く抉る。シンのナカがユダの形を覚えるまで執拗に。何度もシンの中に射精した。身体の最も深いところに所有印を刻むように。
口づけとは比べものにならない程濃密な生気を一番敏感な場所に注ぎ込まれたシンにとっては地獄だっただろう。後になって抗議を受けたが、反省も後悔もしていないし今後も自重するつもりはないので諦めてもらうしかない。
シン曰く、「感じ過ぎてどうにかなりそうで怖くなる」とのことなので、尚更止めるつもりはなくなった。もっと溺れてもっと乱れてしまえばいいのだ。ユダがいなければ息もできないくらいになるのが理想だ。
まさか自分がここまで独占欲の強いタイプだとは思わなかった。新しい発見である。それもこれも全て相手がシンだからである。
「あぁ…これでようやくシンは俺のものだ」
幾度目かの絶頂の後で腕の中で意識を失ったシンを抱きしめ、ユダは嬉しそうに笑った。
- 16.12.16