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素晴らしき結束 01


「あれ?」

ディアッカは目の前の大きな包みをあけて、不思議そうに首をひねった。

戦艦に搭乗しているとは言っても、食料や燃料、衣料品や日用品その他諸々を補給しなければならないわけで、ヴェサリウスとガモフには定期的に物資が届けられてきた。
その中に家族からの差し入れが含まれていることも少なくない。
本来なら必要最低限のものしか持込を許可しないのだが、何しろヴェサリウス・ガモフの両艦には評議会議員の子息が4人も在籍している。
特にニコルやイザークの親は息子を溺愛しているらしく、届けられる物資の数も半端ではない。
最初のうちこそ1つ1つチェックしていたのだが、彼らの私物にそれほど時間をかけるわけにもいかず、ましてや評議会議員の選んだ品を戦場には不適当だからという理由で送り返すわけにもいかなかった。
権力に逆らえないのが、中間管理職の哀しい性である。

本日も月に2度の定期便が来る日だった。
検閲をあっさりとノーチェックで通った物資が、パイロットの部屋に運ばれる。
部屋の前にどん、と置かれた大きな箱を見て、ディアッカは最初イザークの物資だと思っていた。
だが、送り主の名は『タッド・エルスマン』。
宛先は自分の名前になっているから、これは紛れもなく自分あての物資である。

「な〜に考えてんだ、あの親父…」

イザークのように仲のよい親子関係とは裏腹に、ディアッカとタッドの間はお世辞にも良好とは言えなかった。
かと言って親子間断絶というほど悪いわけでもない。
放任主義と言うのが一番近いだろう。
軍に入る時こそ反対されたものの、基本的にディアッカの行動に口をはさんだことはなかった。
その父親が、何故今になって物資を送ってきたのだろうか?

「何かの罠だったりして」

一抱えほどもある荷物をそのまま通路に放置しておくわけにもいかず、ディアッカは仕方なくそれを自室に運んだ。
大きさの割に重量がないことを不審に思いつつ、とりあえず中を見なければ何も始まらないだろうということで、ディアッカは梱包を解いていった。
そして出てきたのは…。

「本当に何考えてんだよ、あの馬鹿親父…」

ディアッカは広がった荷物を見て、大きくため息をついた。





部屋に戻ると、紙袋を前に固まっているディアッカがいた。

「何してんだ?」

複雑な表情をしているディアッカにそう訊ねると、ディアッカはイザークに振り向いてわずかに首を傾げる。

「親父の愛がわからない」
「はあ?何だそりゃ」
「いや、さっき親父から荷物が届いたんだよ」
「へえ、そりゃ珍しいな」

ディアッカとは長い付き合いのイザークだ。
彼らの親子関係もよく知っている。

「で、色々入ってたわけよ。服とか雑誌とか食い物とか。まあ、それはいいとして。問題はこいつなんだよ」

ほら、とイザークに紙袋を押し付ける。
怪訝そうに視線を袋の中に落としたイザークは、すぐにそれが何なのかわかって目を丸くした。

「…これを一体どうしろというんだ、お前の父親は?」
「だから俺もわからないって」
「捨てろ」

一言だけそう言い捨てて、イザークはそれをディアッカに投げつける。
まさか投げられるとは思っていなかったディアッカは、反応がわずかに遅れてしまい、紙袋を取り落とした。
ばさり、と広がる物体。
その中から一枚の紙がひらりと出てきた。

「何だ?これ、手紙…?」

イザークがそれを拾い上げ、そこに書かれている字を眺める。
と、怜悧な印象を与える口元に、にんまりとしか表現できない笑みを浮かべてディアッカに振り返った。

「おい、見ろよこれ」
「なになに…」

2人でしばらくそれを眺め、やがて示し合わせたように一斉に床に広がる物体に視線を移す。

「なるほど…」
「確かにな…」

これから起こるであろう出来事を想像して、2人は顔を見合わせて笑った。