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Rebirth 01


たとえば日本で。
かつての指導者が抱いた未来図を悟った者がいた。
彼の決意を知り、どうしてあの時に気づくことができなかったのかと嘆いた。
気づかないばかりか一方的な情報だけを信じて彼を裏切った。
裏切られたと嘆き、弁解の場すら持たせることなくその存在を切り捨てた自分を深く悔いた。
彼らは思う。

「あの頃に戻れたら、今度は間違わないのに」





たとえば中華連邦で。
己に道を示してくれた人物が掲げた理想を知った者がいた。
優しく、そして時には厳しく自分を叱咤してくれた指導者の本当の顔を、彼女は知らなかった――否、知ろうとしなかった。
故に思う。
あの時自分が彼の本質を知っていたら力になれたのだろうかと。
だから少女は問う。最大の理解者であり最大の守護者である青年へと。

「ねえ、星刻。もし時間が戻るなら、私はあの時何かできたかしら」





たとえばブリタニアで。
大切な友人が抱いた崇高な自己犠牲を知った者がいた。
優秀で傲慢で、でもとても優しかった少年。
本音を心に秘めたまま、己が身を供物として優しい世界を築いた友人に対して彼らは思う。
もしあの時彼の目的を知っていたら自分はどうするだろうか。
答えは簡単。
彼らは口を揃える。

「そんな計画、潰してしまおう」





たとえば廃棄された研究室で。
王の命令に従い彼に加担した者がいた。
若く美しい王はたった1人で誰も成しえなかった偉業を成し遂げ、そしてすべてを破壊した。
頼む、と請われて断れなかった。
そう言い訳をしながらも、いざ実現してみれば胸に残るのは後悔ばかりで。
この優しい世界は、唯一彼の王にだけ優しくなかった。
故に彼らは自嘲う。

「ダメな大人ですね、私達」





たとえば花咲ける宮殿で。
最愛の兄が掲げた理想を実現させるべく努力する少女がいた。
彼女が願った優しい世界を託して逝ってしまった兄を思って、少女は小さな墓標に向かう。
彼女が欲したのは優しい世界。
それは彼女が兄とずっと一緒にいられる世界のこと。
兄がいないこの世界は確かに優しいけれど、彼女にとっては暗闇に覆われていた世界よりもずっと残酷な現実だった。
だから彼女は呟く。

「お兄様、私を置いていくなんてずるいです」





たとえば誰も踏み入れることのない神殿で。
友人であり仇であり共犯者であった主の遺志を継ぐ者がいた。
憎み、裏切り、信じ、己のすべてを捧げた少年の最期の望みを叶えるために己を捨てた少年は、世界の憎悪を一身に背負って亡くなった王の面影を思い浮かべ自嘲する。
すべての望みは叶ったはずだ。
なのに何故こうも苦しいのか。
答えはわかっている。
だから彼は呼びかける。王から託された仮面を手に。

「ルルーシュ…。君に会いたいよ…」





たとえば、緑溢れる大地で。
笑顔の絶えない村を前に微笑む少女がいた。
かつて魔女と呼ばれた少女は既にいない。
唯一の共犯者が少女の心を救ってくれた。
自らに課せられた呪いは解けていないけれど、それでも少女は未来を生きる力を彼から受け取った。
彼女の使命は見守ること。
己の共犯者が築いたこの優しい世界を最期まで見続けることが、世界に希望というギアスをかけた彼にしてやれる謝意だと気づいたから。
だから少女は囁く。彼がいるであろう空へと。

「ルルーシュ、お前にも見せてやりたいよ」





   ◇◆◇   ◇◆◇





それは世界の各地で、ひっそりと呟かれた願い。
願いは力。
ギアスに似ていると言った王がいた。
ギアスは王の力。
それは時に奇跡と呼ばれるもので――。



その日、誰にも気づかれることのないまま奇跡は起きた。


  • 09.04.08