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Temporale 01


!」
どこかで声が聞こえた。


爽やかな気分とはほど遠いぼんやりとした頭のまま目を開けると、そこには麗しいとしか形容のしようがない顔のどアップがあった。
はぁ〜、いるんだこんな美形。
鋭い視線は目元のほくろのせいか妙に艶っぽく、性格のきつそうな口元とか形のいい鼻とか広い肩幅とか…。

ヤバイ、めちゃくちゃ好み!

しかも彼の背後には、これまた美形な集団がずらりと並んでいた。
それぞれタイプが違うけど、もてるんだろうなぁこの人たち。
っていうか、あたしってばなんでこんなところにいるの?


現在のあたしはというと。

1.ベッドに寝ている。しかも羽毛布団。
2.着ているものはパジャマ(それもおそらくシルク100%)。
3.美形集団に囲まれてる。

という状況にいるんだけど。
さて、何でこんなところにいるんだか、さっぱりわかりませんわ。

見慣れない部屋の様子をきょろきょろと見回していると、目の前の美形が心配そうにあたしの顔を覗きこんだ。
「おい、大丈夫か?」
泣きぼくろの彼は眉を寄せ、あたしの頬にそっと手を当てた。
その冷たい感触にようやく我に返ったあたしは、そういえば重要なことを聞くの忘れていたことに気付いた。
そう、惚けている場合じゃないでしょあたし!
「あの…」
「何だ?」

「あなた、誰ですか?」

名前と生年月日、できたら好きな女性のタイプとか教えてもらいたいなあ。
なんて内心どきどきしながら泣きぼくろ君を見ると、ハトが豆鉄砲くらったような顔をしていた。
しばらくフリーズしていたと思ったら、やがてその秀麗な顔を思いっきり歪めた。

「あ〜ん、何言ってんだお前?」
「はぁ?」
「寝惚けてんじゃねーぞ」
「別に寝惚けてないけど」
意外に口が悪いな、この美形は。
「寝惚けてんじゃなきゃ、からかってんのかよ?」
「からかってもいないけど…?」
「じゃあ……」

「ちょお、待てや跡部」
さっきまでソファに座っていた眼鏡をかけた人が、泣きぼくろ君の肩を掴んだ。
どうやら彼は跡部くんと言うらしい。
「何だよ」
「何か様子が変やで」
おぉ、こっちも美形。
あたしとしては泣きぼくろ君の方が好みだけど、アダルトな香り漂う眼鏡君も捨てがたい。
眼鏡君がちらりとあたしを見た。
これは挨拶しとくべきか?
「初めまして」
爽やかな笑顔で挨拶をすると。
「……」
「……」
何故か2人が固まった。

そして、あたしを見て2人揃ってため息をついた。
「……ほらな」
「……あぁ」
はい?


何か2人で内緒話を始めちゃったんですけど。
あたし何か変なことした?
頭がどうの、ショックがどうのって言ってるけど、それってもしかしてあたしのことを言ってるの?
しばらくひそひそ話してたけどようやく終わったらしく、2人はくるりとあたしへ振り返った。
美形2人が揃うと迫力あるなぁ。

「お前、どこか痛いところあるか?」
痛いところ?
あちこち動かしてみる。
「えっと、左肩が痛い、かも……」
「頭から落ちたもんなぁ…。首の骨折らんかっただけましや。ほな、1つ質問してええ?」
「どうぞ」

「自分、名前言えるか?」
「あたしの?」
「せや。自分の名前と生年月日。あと、学校名とクラス。とりあえずそのくらいでええやろ…、わかるか?」
何言ってるんだろ、この人。そんなの簡単じゃない。
自分の名前いえない人がいるはずないじゃん。
「あたしの名前は……」

名前…?

「名前は…」
はて、何だっけ?
佐藤…?いや、違うな。鈴木…これも違う気がする…。
「何だっけ?」
あたしが首をひねっていると、眼鏡君がため息をついた。
「…やっぱりや」
だから何が?


  • 04.04.18