夢を見ていた。
それは夢にして現――紛れもなく現実のものであると少女は気づいていた。
目の前に広がるのは殺戮の光景。
否。
謀略の末路とでも言えば良いのか。
溢れんばかりの怨嗟と情念。そして困惑と空虚。
体躯を長槍に貫かれた青年が、血に濡れた眼差しで周囲に呪詛の言葉を叫んでいた。
――聖杯に呪いあれ! その願望に災いあれ!
言の葉が周囲に怨嗟を呼び込んでいく。
高潔な青年。だが、彼の忠義は主にだけ届かなかった。だからこその言葉。
彼の無念はいかばかりのものだろうか。
少女の眼差しから涙が溢れる。
どうして、と幼い唇が形を作るが、あまりの光景に言葉にならない。
どうして彼がこのような最期を迎えなければいけないのか。
生命の理から外れている存在だということはわかっていた。
その身は既に朽ちた者であることも。
だからといって――。
このような最期を迎えるほどの業が、彼にあったのだろうか。
少女が伸ばした手は青年に届くことはなかった。
そもそも夢と現の境界にあるような状態にいる少女の存在は、この場にいる誰にも気づかれることはないのだ。
――いつか地獄の釜に落ちながら、このディルムッドの怒りを思い出せ!!
そう叫び、青年は消滅した。
最後まで少女の差し伸べた手には気づくことがなかった。
- 12.08.27