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月に叢雲花に風 02


この話には18歳未満の方が閲覧になるには不適切な内容が書いてあります。
18歳未満の方やBLが苦手な方、又は女体が嫌いな方は閲覧をおやめください。 ご覧になった後での苦情は一切聞きませんのでご了承願います。
大丈夫な方はレッツスクロール。
































































































――清正

赤い小さな唇が吐息と共に自分の名を紡いだ。
熱を含んだ声が何ともいえず甘くて、清正は思わずその甘さを味わおうと唇を塞ぐ。
チロチロと躊躇いがちに触れてくる舌を己のそれで絡めて吸い上げれば、腕の中の身体はそれだけでも感じるのか大きく仰け反って清正に縋りついた。
白い指が背に爪あとを残す。
その小さな痛みに僅かに眉を顰めながら、闇夜に浮かぶように白い肌へと赤い華を散らしていく。
誰も踏み入ったことのない新雪に足跡を残していくような行為は、何となく男としての征服欲を満たしてくれる。
腕の中で細かく震えていた身体は時間をかけて丹念に愛したせいか見事に花開き、清正の愛撫一つ一つに艶やかな反応を見せる。
細い身体だった。
幾度か訪れた遊女の匂い立つ女性の色香とはほど遠いそれは、だが清正には誰よりも美しく見えた。
体型に相応しく小ぶりの胸は綺麗なお椀型で、柔らかく絹のような肌の感触とともに触れていると何とも気持ちが良い。
両手で掴めてしまうのではないかと思うほど細い腰はひどく頼りなく、ひどくしたら壊れてしまいそうだった。
それでも清正を受け入れているナカはきゅうきゅうと吸い付くように締め上げてきて、熱く潤ったそこはどんな女よりも具合が良く、ゆっくりと腰を動かすだけで熱に浮かされたように喘ぐ喉は白く細く、普段は鋭い切れ長の瞳は快感のせいでとろんと潤んでいて何とも妖艶だ。
深く突けば耳に響く嬌声はまるで媚薬のよう。
ここまで素晴らしい身体はお目にかかったことがない。
女性との交わりは、年齢から考えたら決して少なくないだろう。
武人として育てられた自分は体格にも恵まれたためか、それ相応の精力も持っていたし、義父である秀吉は無類の女好きで機会があれば清正や正則を遊郭に連れて行ってくれたため、その手の相手には不自由したことがない。
そんな清正でも体験したことがないくらい、この身体は極上だった。
白い足が清正の腰に絡みつき、もっととねだる。
普段からは想像できない淫らさは男にとってはたまらない。
壊れてしまうのではないかという危惧は、男の本能によって思考の片隅に追いやられてしまった。
思う様腰を打ちつけ内部を抉り、嬌声とも悲鳴ともつかない声を媚薬代わりに清正はその美しい肉体を貪る。
これは清正のものだ。清正のために生まれてきて、清正のためだけにその身体を許すただ一人の女だ。
誰にも渡さない。

――きよ、まさ…。好き…。あいして、る…

うわ言のように繰り返す女の目から重力に負けた涙が頬へと流れる。
そんな様子すら美しい。
限界が近くなってくる己と同じく、女の身体も限界を迎えるようだった。
小さな悲鳴と共に背が大きくしなり、赤い髪が布団に散らばった。

「三…成……っ!!」

ビクビクと痙攣する内部に締め付けられるように、清正は三成のナカに己の欲望を注いだ。





「――っ!!!」

声にならない悲鳴と共に飛び起きた清正は、目が覚めてしばらくしても先ほど見た夢の映像が信じられなかった。
何と言う夢を見たのだ。
よりにもよって三成。しかも女性の身体をしていた。
間違いなく昨日聞いた会話が原因だろう。
だからと言って夢に見るとは。しかも夢に見るだけでなく身体はしっかり反応しているのだ。
それほど溜まっているとは思わなかったが、そういえばここ数日は執務が忙しくて女を抱いていないことに気がついた。
といっても本当にまだ数日だ。女が欲しいと思う程でもなかったのだが、自分で思う以上に飢えていたということだろうか。
そんなことを自問しながらも、変化した己を見れば浮かぶのは自己嫌悪だけだ。
清正は三成が嫌いだった。嫌いだと思っていた。
それなのにいくら「実は女でした」とか言われたからってあっさり夢で組み敷くことはないだろう自分。
どこまで節操ないんだ自分。
しかも妙に可愛くて色っぽくて困ったじゃないかどうしてくれるこの想像力。
打ち消そうと思えば思うほど、脳裏に浮かぶのは白い肌を淡く色づかせて清正の身体の下で喘ぐ三成の姿だ。
冷ややかな声が甘い艶を含んだそれに代わる瞬間は何ともいえない快感があり、ふわりと漂う女の匂いは今思い出しても眩暈がするほど淫猥だ。
そんなことを思い出してしまえば若い身体は即座に反応してしまうもので、布団の中の分身が固く張り詰めているのを感じて清正は頭を抱えた。
もうすぐ起床の時間だ。
長浜城の女中は働き者で、おそらく時間通りに清正を起こしに来るだろう。
それまでに何とか身体を鎮めておかなければいけない。
ついでに先ほどの夢のせいで汚れてしまった下帯も代えておきたいところだ。
それなのに頭とは裏腹に身体は鎮まる気配を見せないし、脳内では三成の甘い声が繰り返し反芻されているし、どうしたらいいのか正直わからない。
初めて性を覚えた若造でもあるまいしと年寄りじみたことを考える清正の年齢はまだ16歳。立派に若造である。
悩んだ清正は苦肉の策として脳内に浮かぶ三成の顔を正則に置き換えてみた。
白く細い身体に正則の顔。野太い声で囁かれる「愛してる」の言葉。
何たる気持ち悪さ。清正の分身はすぐに大人しくなった。
ありがとう正則。とても助かったがものすごく気色悪かったので二度と御免だ。
効果は大きいがダメージも大きい。
下手したら不能になりそうだ。
これは最終兵器として封印させてもらおう。
心の中で兄弟同然の正則に感謝をしつつ、侍女が声をかけるには少々早いが起きることにしようと身体を起こしたその時、小さな足音と共に清正の部屋の襖が開いた。
侍女ではない。侍女はこんな無作法なことをしない。
正則でもない。正則は時間通りに起きてくることはない。
では、誰か。

「おや、起きていたか」
「三成…」

夢の中であんなことやこんなことを思う存分やってしまいましたごめんなさいとっても美味しかったですご馳走様と思わず白状したくなるほど冷ややかな顔がそこにあった。
既に顔も洗って身支度も済ませたのだろう。
きちんと着込まれた服は一分の隙もなく、普段と何一つ変わらない三成の姿だった。
だが清正は襟元すら覗かない三成の服装が自分の性別を隠すためのものだと気付いてしまい、またもや脳裏に夢の中の艶姿が浮かび顔を赤くした。

「ん? 何を赤い顔してるんだ。まさか風邪でもひいたか?」
「い…いや…違う」
「そうだな。馬鹿は風邪などひかんか。それより、秀吉様が遠乗りにいかないかとお誘いくださった。おねね様が弁当を作ってくださっている。お前らも行くだろう」
「あ……あぁ……」
「だったらすぐに支度してこい。あと、もう1人の馬鹿も起こしてやってくれ。置いていくと後が煩い」
「わ…わかった」

ぜんまい仕掛けの人形のようにコクコクと頷く清正に、さすがに三成も可笑しいと思ったのだろう。
未だに布団の中にいる清正の前に膝をつき、顔を近づけた。
コツン、と当たる額。長い睫が視界一杯に映る。
ふわりと漂う爽やかな香の匂いに息が止まった。

「ふむ…熱はないか。お前、まだ寝ぼけているわけではないだろうな。さっさと顔を洗って目を覚ませ。いいかすぐに来いよ。秀吉様とおねね様を待たせることは許さんぞ」

ジロリと睨まれたが清正は反応できなかった。
かろうじてすぐに行くとだけ伝えた。
そして脳内に再び浮かんでしまった三成の姿を打ち消すためにまたもや清正は苦労し、二度と使わないと誓った最終兵器の封印を解くハメになった。
朝から天国と地獄を味わった清正は、それでも支度を済ませて正則を起こして厩舎へ急いだ。
だが清正達が到着した頃にはねねの準備もすっかり終わっていて、秀吉も既に馬上にいた。

「清正が寝坊なんて、珍しいこともあるものじゃのう」

面白そうに笑う秀吉の隣、同じく鹿毛の馬に乗った三成からは冷ややかな目を向けられることになるのだが、清正はそれを見ることが出来なかった。

その後も夢に出てくる三成に悩まされることになるのだが、残念ながら今の清正がそれに気付くことはない。


  • 10.09.01