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stay my love


この話には18歳未満の方が閲覧になるには不適切な内容が書いてあります。
18歳未満の方やBLが苦手な方は閲覧をおやめください。
ご覧になった後での苦情は一切聞きませんのでご了承願います。
大丈夫な方はレッツスクロール。
































































































触れる指は記憶の中のそれよりも遥かに甘く優しく、そして淫靡にシンを追いつめていく。

「ん…ッ、は…ぁ…」

かつて幾度となく肌を合わせた彼の行為は的確にシンの弱いところを突いて、シンはともすれば愛撫に溺れそうになる意識をどうにか気力のみで繋いでいた。

「…ッ、や…め…」

両手を戒められているために身を捩るしか逃げる術がなく、しかもその程度では目の前の彼には抵抗と呼べるものでもない。
くつくつと笑う声が耳朶を打ち、身体を弄ぶ指は下へ降りていく。

「や…ッ、…ん…ぅ」

腰骨をなぞる指がゆっくりと螺旋を描き、シンは嬌声を噛み殺した。
そうすることで目の前の人物がどう思うかわかっていながら、だがそれでもこのような状況で素直に身を委ねることができるはずもなく。
いやいやと何度もかぶりを降りながら、シンは与えられる刺激から逃れようともがいた。

何故こんなことになったのだろう。
幾星霜の日々を祈り続けたのかすでにわからなくなってしまうくらい長い年月彼を求めていたのは事実なのに。
ようやく会えたというのに、それでも今シンは自分の状況に対して歓喜よりも困惑が勝っている。
触れる指も囁く甘い声も、記憶の中のものと寸分違わぬものなのに。

「…強情だな」

どこか冷淡に聞こえる響きが耳を打つ。
以前なら簡単に身体も心も蕩けていた愛撫に、だが必死で捕われまいと我慢する姿は、普段ならそそられる媚態ではあるけれど今この状況ではそれが面白くないのだろう。
低く冷たい声。
このような声を聞いたのは初めてだ。――いや、正確には二度目。
本当に変わってしまったのかと思えば涙が出そうになって、シンはきつく唇をかみしめた。
それをどう思ったのか、目の前の男がかすかに動いた。
すっと指が離れる。
シンは小さく息を呑んだ。
機嫌を損ねたのだとわかったが、シンには彼の顔を窺うことができない。
シンの目を覆う白いリボンのせいで、先程から視界は奪われたままだ。

「ならば、俺の好きにさせてもらおう」
「…ッ、ひ……、あぁ……ッ!!」

いきなり最奥に捻り込まれ悲鳴を上げたが、愛しい人は行為を中断させることなく更に奥へと無慈悲に踏み入ってくる。
触れ合わなくなってから長い年月がたっている身体は受け入れることをすっかり忘れているため、シンの身体は体内に捩じ込まれる異物を押し出そうとする。
だがそんな動きすら無視するように強く押さえ込まれた。
足を抱えられ深く繋がった身体を更に揺さぶられ、視界が白く染まる。

彼に抱かれるのは初めてではない。
かつては頻繁に互いの体温を分け合って眠った仲だ。
それでも、どんな時でも彼は自分をこんな風には抱かなかった。

「…や…ッ、い…た…ぃ…ッ」

悲鳴とも懇願ともつかない声を遮るように荒々しい口付けが降ってくる。
視界を奪われ四肢を封じられ更には言葉すら封じられて、シンはただ目の前の男の行為に耐える以外術がなかった。
視界を遮られる前に見た、懐かしい面影に心の中で何故と問いかけながら――。





   ◇◆◇   ◇◆◇





自宅の庭で1人鍛錬をしているシンの下へ突如彼が現れた時、シンは驚愕のあまり身動きができなかった。
かつての同士であり、シンの最愛の天使ユダ。
昔と何一つ変わらぬ笑顔でシンの前に現れた彼は、だが今のシンとは敵同士だったはずだ。
かすかな微笑み一つでどうしようもないほど動揺している自分が可笑しかった。
敵として対峙することもできず、かといって逃げることもできないシンに、ユダはゆっくりと歩み寄ってきた。
意図がわからない以上1人で対峙するのは危険だとわかっていても、シンにはどうすることもできない。
頬に触れるぬくもりに泣きそうなくらい愛しさが募る。
至近距離から見つめられる青瞳に思わず心まで吸い取られてしまいそうだった。

「迎えに来た、シン」

甘い囁きに、だがシンは震えながらかぶりを振った。

「…行けません」

傍にいたいと切実に願っていたくせに、それでもこうして目の前にすれば彼の誘いを受けるわけにはいかなくて。
せめて夢の中でだけでもと願うほどに焦がれた彼の手を取れない自分がひどくもどかしかった。
会いたくて会いたくて、いっそ気が触れてしまえば楽になれると思ったほど愛しいのに。
それでもシンはそんな彼から一歩距離を置かずにはいられない。
じり、と後ずさったシンをどう捉えたのか、ユダの柳眉がかすかに動いた。

「…どうしても、か」
「私は…」

言葉を口にするのはひどく困難だった。
涙がシンの頬を滑り落ちる。

「わたし、は…」

多くの守護天使を地獄へと誘ったユダ。
地上の守護天使を庇護する自分達とはどうあっても相容れないのだと、惑う心をようやく納得させたのはほんの数日前。
それでも一縷の望みだけでも繋ぎとめたかったのか、こうして対面してしまえば事実を確認することもできず。
また、差し出された手を拒むことを心が否定する。
悠久のあの日、差し伸べた手を取ることなくルカと共に堕天したユダに、最期までついていきたいと願ったのは紛れもない事実。
彼自身の望みでなければ、シンはすぐにもユダの後を追っただろう。
あの日もシンの心は引き裂かれそうにつらかった。
そして、今も――。
何も考えずこの身を投げ出してしまいたい。
今度こそ片時も離れたくない。
そう思うのに、四聖獣としての使命がそれを許さない。
告げられない声は黄金の瞳から溢れて流れていく。
ユダはその視線を受け止める――真摯に。

だが……。

「迎えに来た、と俺は言ったのだ」

シンが後ずさった距離を埋めるように一歩踏み出して、ユダは低く告げる。

「だから連れて行く。お前がどんなに抵抗しようとな」

冷ややかな眼差しに警戒するよりも先に鳩尾に強い衝撃を感じてシンは意識を失った。





   ◇◆◇   ◇◆◇





「……っ、ん……ッ」

敏感な箇所を擦られて、シンの背が大きく仰け反った。
それにユダは口元だけで笑う。
漏れる声はすでに否定ではなく、嬌声。
幾度も愛してきた身体だ。
シンが感じる箇所は本人よりも熟知している。
相変わらず細い肢体。
だが肌の肌理細かさは少しも衰えていなくて。
寸分の隙もないほど衣服に隠された肌はどこまでも白く、胸元に咲いた紅い花びらが鮮やかに彩っている。
しっとりと汗に濡れてユダの情熱のまま揺さぶられている姿は、普段のストイックなシンを知る者が見れば驚くほど扇情的だ。
声を押し殺す姿も、快感から逃れるように首を振る姿も、それらすべてがユダの行為が原因だと知っているからこそ、ユダの心に昏い欲望が芽生えてくる。

「シン」
「――ッ」

耳元でひっそりと囁き唇で耳朶を愛撫すれば、噛み締めた唇からは声にならない悲鳴が漏れた。
するりと目を覆っていたリボンを解けば、涙に濡れた黄金の瞳。
瞬きをしたシンの瞳から涙が溢れて零れる。
傷つき困惑したその姿もひどく愛しさが募り、ユダは眦に口付を落とす。
流れる涙を吸い取るように寄せられた唇に、シンの身体が大きく震えた。

「愛しているよ、シン。お前だけを」
「…ユ…、ダ……」

律動を再開すれば、堪えきれない嬌声が喉をついて出る。

愛しているよ、シン。
誰よりもお前だけを。
だから……。

「お前を逃がさない」

意識を手放したシンに果たしてその言葉が聞こえていたのかどうか。
ユダはうっそりと哄笑った。


  • 08.08.10