深夜に近いという時刻、いつものように前触れもなくやってきたは、家主である俺(正確には俺の家ではないが)の存在を忘れたように携帯を片手に黙り込んでいる。
誰かといるときには基本的に携帯を取らない主義のにしては珍しく、見事に俺のことは無視。
それが面白いはずないが、だからと言って咎めるほど大人げなくもいられず、結果手持ち無沙汰なまま未だに携帯から視線を外さないを放ってシャワーを浴びることにした。
が家に遊びにくるのは別段珍しいことではないし、また深夜にふらりとやってきて泊まっていくことも少なくない。
だがそれには何かしらの理由があってのことなのだが、家に来てから俺の顔すらろくに見ないというのは初めてだ。
存在を忘れているわけじゃないとは思うが、らしくない態度が気にかかる。
部屋に戻ると、先程までいた場所にの姿は見えなかった。
代わりにベッドの中で安らかな寝息をたてる無邪気な姿が。
一体何しに来たんだあいつは。
開きっぱなしの窓から、すっかりと秋の気配に変わった風が、室内に冷気を運んでくる。
入浴後の身体には気持ち良い程度のものだが、気管支があまり丈夫じゃないには、あまりよいものではなかった。
閉めようと窓辺に近づいたその時――。
「間もなくだね」
眠っていたと思っていた寝台から衣擦れの音がしたと思ったら、青灰色の瞳が嬉しそうに俺を見上げていた。
何を、なんて確認するつもりはない。
覚えていたとは思わなかったから、不覚にも一瞬言葉がでなかった。
「ようやく同い年だよ、景吾」
「うるせーよ」
嬉しそうにくすくすと笑うその顔は何か含むようで、それが何を意図しているかは明白だった。
1ヶ月にも満たない出生日の違い。
子供のようにそんな些細なことに俺がこだわっていることを揶揄してのことだが、不思議と気にならなかった。
最もそんな例外は1人だけで、もしこの台詞を発したのが他のメンバーだったら、それこそただではすまさないのだろうけど。
ベッドの中から手招きされて近づくと、シーツを被ったままの身体がふわりと抱きついてきた。
カチリ、と音がして時計の針が重なる。
それと同時に耳元に囁いてくる柔らかい声。
「Happy Birthday、景吾」
誰よりも早い祝福の言葉。
シンプルで、だがそれは一番の贈り物。
- 06.10.04