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真の支配者


応援ってすごい重要なんだ。
今回よくわかりました。





都大会が始まった。
試合を控えたAコートでは、200人を超えるテニス部員がコートの周りをぐるりと取り囲んでいる。
初戦は柿ノ木中と対戦。
強いの?って聞いたらそこそこ強いって返事が返ってきた。
景吾は「大したことない」って言うけど、部長は「油断できない相手」だって言う。
どっちが正解なんだろう。
なんか微妙。

「氷帝!氷帝!」
「氷帝!氷帝!」

すごいなぁ。
相手校の選手、完全に呑まれてるよ。
実力出し切れなくて負けたら悔しいよね。
でも、頑張ってる選手の応援止めろとか言えないし。
えっと、頑張ってください。

「勝つのは氷帝!」
「負けるの柿ノ木!」

一糸乱れぬ声援って、こういうのを言うんだろうな。2,3年生は当然として、僕と同じ1年生も当然のように応援に参加している。
応援なんて教わってないのに、どうしてみんな知ってるんだろう。
有名なのかな。
隣にいる景吾に聞いたら、大会に来たことのある奴ならほとんど知っているんだって。
確かに一度聞いたら忘れないよね。

「でもさ」
「何?」
「この応援ってつまんなくねえか」

どういう意味?
みんな一生懸命応援してくれてるのに、それはちょっと失礼なんじゃ……。

「この応援の目的って、何か知ってるか?」
「選手の応援でしょ?」
「それだけのわけねーだろ。相手の選手に多大なプレッシャーをかけて戦意を喪失させる。これはれっきとした心理作戦なんだよ。戦う前から勝負は始まってるんだ」

あぁ、なるほど。
確かに効果的かも。
コート全面を相手校の応援で占められたら、確かにいやかも。

「でも、俺に言わせればぬるいよな」
「どこが?」
「どうせなら徹底的にプレッシャーをかける。そして俺様の実力で、さらに叩きのめす」
「じゃあ、景吾はどんな応援がいいの?」

そう訊いたら、景吾はにやりと笑った。

「耳かせよ」

ふんふん。なるほどね。
効果があるかはともかく、戦意はなくなるね確実に。
でも、いいのかな?





そして試合が開始した。
今回は控えなので、僕の出番はない。
ということで侑士たちと一緒に応援席に座っている。
先輩たちがコート正面の席を譲ってくれたので、申し訳ないと思いつつ有難くその席に座った。
うちの先輩たちって本当に親切だ。
ダブルス1,2とも6−0で氷帝の圧勝。
次のシングルス3の結果次第で、早ければ勝敗が決まる。

「次で終わりやな」
「そうだね」

だって次は景吾だし。
前の試合を見ていて、相手校のレベルは何となくわかった。
おそらく景吾の敵ではないだろう。
景吾がコートに入ろうと立ち上がった。
その時応援団長(と言っていいのかな?氷帝の応援を取り仕切っている先輩)が僕を見た。

、あれやった方がいいか?」
「できればお願いします」
「わかった」

そして景吾の応援が始まる。

「勝つのは氷帝!」
「負けるの柿ノ木!」

ここまではいつもの通り。
景吾が言ってたのは、ここからが違うんだよね。

「勝者は跡部!」
「敗者は佐々部!」
「勝者は跡部!」
「敗者は佐々部!」
「勝者は……」

パチン、と景吾が指を鳴らす。
その途端、応援の声がぴたっと止まる。
そして景吾は着ていたジャージを空高く放り投げる。

「俺だ」

しんと静まり返ったコートに景吾の声が響いた。

「……何やねん、これ」
「景吾のリクエスト。この方がいいって言うから先輩に頼んでみた」

本当にやってくれるかわからなかったけどね。
でも、景吾の言う通りだ。
相手選手びっくりしてるよ。
作戦成功?
景吾がこっちを見てたので手を振ったら、景吾は満足そうに笑った。

「……

何?

「あんま、あいつを甘やかしたらあかんで?」

甘やかしてないよ?
そう言うと、侑士は片手で額を押さえた。
別に甘やかしてないってば。

結果は6−0で景吾の圧勝。
相手の選手はかわいそうなくらいぼろぼろだった。
まったく実力を出せなかったのかも。
応援のせい?


  • 04.12.12