1年6組には天使がいる。
その噂は、新学期が始まってわずか3日目にして全校に知れ渡った。
は『天使』と呼ばれている。
誰が言い出したのか知らないが、その呼び名はあいつにぴったりだと思う。
は日本人離れした顔立ちをしている。
まあ、父親が英国人なので当然と言ったら当然なのだが。
柔らかい栗色の髪。
大きな青灰色の瞳、長い睫。
肌は雪のように白く、宗教画の天使そのものだ。
だが、が『天使』と呼ばれるのは、何もそれだけが理由じゃない。
何と言っても、最大の理由は本人の持つ雰囲気だろう。
初対面の奴はたいていその雰囲気に圧倒されて話しかけることはおろか近づくこともできない。
まあそれは仕方ない。
俺もそうだったしな。
綺麗すぎるのだは。
例えて言うなら、降り積もった雪に光が乱反射しているような感じ。
この世の綺麗なものだけで作られた、一点の曇りもない綺麗な生き物。
神秘的な存在。
はそういうイメージを他者に抱かせる。
だから『天使』なのだろう。
もっとも本人にその自覚はまったくない。
誰とでも気さくに話すので、ここ数日は『天使』と仲良くなろうとする輩が急増中だ。
跡部が傍にいるお陰で今のところ平和だが、これから先トラブルが起こらないとも言い切れない。
あいつ無防備だし。
どうやらクラスの連中が『を守る会』とやらを作ったらしいので、が1人にならない限りは大丈夫だと思うけど、一応用心はしておかないとな。
さらに最近聞いた噂では、の笑顔は『天使の微笑』と呼ばれ、それを見た者は一日を幸せに過ごせるらしい。
……なんだかなぁ。
「ねえねえ、亮」
「何だ?」
「この学園に天使がいるって本当?」
「……」
おまえだ、おまえ!!
- 04.12.09