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夏の風物詩


 窓越しの空に大輪の花が咲く。
 年に一度の花火大会。都内でも有数のイベントの一つであるため眼下には大勢の観客が集っていることだろう。かくいう黒子も花火を見るために黄瀬のマンションへやってきたはずなのだが、悲しいことに花火を見る余裕など既にない。

「ぁ、あぁっ、ん、ぁっ」

 立ったまま窓ガラスに押し付けられ背後から黄瀬に貫かれた黒子は、黄瀬の律動に合わせて喘ぐような息を繰り返す。やりにくいからと片足を掬い上げられた体勢のせいで体重を支えるのは右足一本、しかもそれすらつま先でようやく立っているような状態だ。内部から齎される快感のせいだけでなく震える足では上手く身体を支えることはできず、気が付けば上半身は窓ガラスにピタリと押し付けられていた。
室内から花火を眺めるためにカーテンは開いたまま。かろうじて体勢を支えるために引っ張られたカーテンが黒子の身体の一部を隠してはいるものの、外から見れば何をしているか一目瞭然だろう。幸い近くに室内を窺えるような高層ビルはなく、更には上空を鮮やかに彩る花火のせいで気付かれることはないだろうが。

「ひぅっ」

 足の力が抜けて黄瀬の怒張が黒子の奥を抉る。狭い内壁はこれでもかと広げられてしまっているというのに更に奥を責められては堪らない。目の奥がチカチカと明滅して意識が飛びそうになる。思わず喉から引き攣るような声が漏れたがそれが苦痛からでないことは後ろにいる黄瀬にも分かったのだろう。前立腺を抉る動きから奥を責める動きへと律動が変化する。

「やっ、黄瀬く、ん、くるし…っ」
「黒子っち身体固いもんね。でももうちょっと我慢して」

 無理な体勢を強いられているため身体のあちこちから悲鳴が聞こえてくる。特に足はそろそろ限界が来るのではないだろうか。間断なく背後から後孔を貫かれ相手の思うままに揺さぶられる身体が崩れないようにガラスに爪を立てるが、短く切り揃えられた爪では何の意味もなさずに汗で濡れた指が小さな音を立てるだけだった。

「やっ、あんっ、あぁっ」

 制止の声は嬌声となって空気に溶ける。たとえきちんと出たとしても黄瀬が聞き入れてくれるかと言われると難しいのだが。視線の先では大輪の花火が咲いている。打ち上げの振動が腹に響いて更なる快感をもたらす。骨伝導で伝わる振動すら悦になるのだと知ったのはいつだったか。音も花火の醍醐味だと開かれたままの小窓から聞こえる大きな音に、まるで鼓膜が犯されたように脳髄が甘く痺れていく。
 黄瀬の動きに合わせるように腰が揺れるのを止めることができない。犬がマーキングをするように片足を持ち上げられた体勢のせいで窓ガラスに結合部がはっきりと映し出されている。
ぐるりと体勢を動かされ結合が深くなったせいで一番弱い箇所を擦られ、黒子は快感から逃げるように窓に貼り付いた。
 至近距離に映る自分の顔がみっともない程欲に塗れていて思わず目を背ける。背後で黄瀬がくすりと笑う。無駄なのに。そんな声が耳朶を擽り、同時に引き抜かれた黄瀬のモノが黒子の最奥を激しく抉った。

「ひっ、やあっ、あぁっ、!」

 限界が近かった黒子はその一突きであっさりと達してしまった。衝撃に黒子が白濁を吐き出して窓ガラスを汚した。既に何度か放たれていたせいもあって量は少ない。トロリと流れ落ちるそれを指で掬うと、意識を飛ばしかけてる黒子の目の前に差し出した。

「舐めて」

 言われるままに黒子の唇が開いて小さな舌が黄瀬の指についたそれをゆっくりと舐め取っていく。
 とろんと目を欲に蕩けさせぴちゃぴちゃと音を立てながら黄瀬の指に舌を這わせて丁寧に舐め取っていく姿は普段の黒子を知っている者には信じられない程に淫靡だ。
 舌先を二本の指で挟むように愛撫すれば未だ繋がっている箇所がきゅうっと締め付けて快感を告げる。舌裏や上顎を擽れば萎えたはずの下腹部が熱を帯び始めた。そのまま口づけをする時のように指で歯列を愛撫すれば鼻から甘い声が抜けていく。指で腔内を愛撫したまま未だ萎えていない黄瀬のモノを黒子の中で動かせば淫らに腰が揺れ始めた。視線は茫洋と空を見つめており中途半端に開かれたままの口からは唾液が糸を引いて顎へと落ちていく。
 全身から力が抜けたように黄瀬に凭れかかる姿は疲労困憊にしか見えないが、黄瀬を受け入れているナカはきゅうきゅうと緩急をつけて黄瀬の怒張を締め付け、もっとと強請るように複雑に蠢いていた。油断すればそれだけで達してしまいそうな動きは通常の状態では決して起きない、黄瀬だけが知る合図だ。

(――始まった)

 黒子の体力は平均的だが黄瀬に比べればその差は歴然だ。そのため黄瀬に抱かれる時は数回で意識を飛ばしてしまうことが多いのだが、極稀に理性だけが飛んでしまった状態に陥ることがある。その時の黒子は従順な人形のようでありながらも非常に淫猥になるのが特徴だ。
 それに気づいたのは偶然だった。普段は抱き潰してしまうことがほとんどなのだが、たまたまその時だけ普段とは違う様子の黒子に気が付いた。身体は小さく痙攣を繰り返し、目は虚ろ。声をかけても何の反応も見せない黒子に慌てて救急車を呼ぼうとしたのは記憶に新しい。
 結局異常ではなくドライでイき続けていただけだと知ったのは二度目に同じ状況に陥ってからだった。
 意識はないが触れればいつも以上の反応を見せる黒子に行為を再開してみれば思った以上に乱れる黒子の姿が拝めた。欠点はしばらく動けなくなることだが、幸い明日の予定はお互いに入れていない。黄瀬は朝まで黒子を離すつもりはなかったし、黒子は買い溜めておいた本を読む予定だった。読書の場所がリビングではなくベッドの中でも構わないだろう。怒るようならバニラシェイクを買ってくれば良いだけの問題だ。黒子の怒りを鎮めるのは熟知している。
 甘く潤んだ瞳と熟れた果実のような唇。ほんのりと朱に染まった身体は些細な刺激も快楽となるらしく、まるで楽器のように黄瀬の指に反応して妙なる音色を奏でる。勿論ナカの素晴らしさは筆舌には尽くしがたい。

「はっ、ぁ…ん、っう、ぁあ」

 既に意識は飛んでいるのだろう、黄瀬にされるがまま快楽を享受する姿は何度見てもたまらない。
 結合部が外れないように黒子を抱き上げ繋がったまま背後のソファーに向い合せで座る。自重更に深くなった結合に黒子の身体が大きく跳ねるが腰を掴んで奥まで突き上げた。ぐぽんと音がして先端がいつもとは異なる感触に包まれる。正常位では届かない奥に入り込んだのだろう。

「あ、ぁっ、や、やっあ…お、くぅ…っ」
「あは、結腸に入っちゃったね」
「や、やあっ、そこ、だめっ、駄目ぇっ」
「うんうん、黒子っち、ここ攻められるの大好きだもんね」
「ひっ、やっ、んっ、あ、んぅっ」

 黒子は座位が苦手だ。理由は感じ過ぎてしまうから。だが黄瀬の好きな体位は座位なのだ。対面が一番だが背面も捨てがたい。座位から騎乗位に体勢を変えれば自分の腹の上で乱れる黒子の艶姿が堪能できる。どれも普段の黒子なら恥ずかしがって嫌がる体位だが、意識の飛んだ黒子は快楽に従順で全て受け入れてくれる。何とも健気で可愛いものだ。
更にはドライオーガズムを経験して弛緩した身体は、普段は大きすぎて全て受け入れることができない黄瀬の怒張を奥の奥まで受け入れることができるようになっている。根本まで余すところなく黒子のナカにいることができるこの状況を逃す理由はない。
 黒子の呼吸が落ち着くのを待とうとしたが先に黒子が強請る方が先だった。細い腰がゆるゆると動き始めたのを察して下から突き上げる。抽挿を繰り返すたびに先端が結腸の入口にひっかかるような感じが堪らない。黒子の口からはひっきりなしに甘い声が上がっている。明日はきっと声が嗄れているだろう。文句を言われるかもしれないがそれは明日のこと。今は思い切りこの状況を楽しむことしか考えられない。

「はっ、あっ、ひぁっ、あぁっ!」
「は…っ、相変わらず、すげー締まり」
「やっ、おくっ、やらぁ!」
「咥え込んで離さないの黒子っちじゃん。ほら、きゅうきゅうって締め付けてる。『もっと奥にちょうだい』って言ってるよ」
「こ、われちゃうっ、おしり…気持ち良くてこわれちゃうよぉ!」

 嫌だ嫌だと首を振りつつも腰は淫らに揺れて黄瀬の怒張を美味しそうに味わっている。引いて突いて捏ねくり回して、黄瀬の怒張は思うままに黒子の内部を蹂躙する。二人の腹の間に挟まれている黒子のペニスは今にも弾けそうに先走りを垂らして揺れている。相変わらず可愛らしい色をしているそれに指を絡めれば数回扱いただけで達してしまった。つられるように内部がきつく蠕動して黄瀬も奥に吐き出した。一滴も残らず黒子の中に注げば小さな悲鳴を上げて黒子がぐったりと倒れ込んできた。

「黒子っち?」

 返事はない。どうやら気絶しているらしい。気が付けば花火は既に終わっていた。時間にして一時間半程だろうか。今日はいつもより時間をかけていないのにと、一時間半も黒子を貪った充足感よりも物足りなさが先に立つ。時間も深夜には程遠い。何よりも、黒子の中で果てたはずの黄瀬の怒張は未だ硬さを失っていない。とはいえ意識がない黒子を抱いたところで愉しみは半減だ。
 黄瀬は黒子を抱きしめるとソファーに寝転がった。単身者のリビングに置くには大きなそれも男二人が横になれば窮屈だが構うまい。ベッドに運ぶよりもこのままでいたいのだ。
 二人の身体は繋がったままだ。目が覚めた時に黒子がどんな反応を示すか想像するだけで楽しい。
 今日は好きなだけ自分に付き合ってもらう約束だったのだ。眠ってしまった分の時間は翌日に繰り越しても構わないだろう。

「約束は守ってもらわないとね」

腕の中で眠る黒子の頬に口づけをして、黄瀬はそう囁いた。



  • 16.10.25