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キセキの虜囚


この話には18歳未満の方が閲覧になるには不適切な内容が書いてあります。
18歳未満の方やBLが苦手な方、又は女体化が苦手な方は閲覧をおやめください。
ご覧になった後での苦情は一切聞きませんのでご了承願います。
大丈夫な方はレッツスクロール。































































































何でこんなことが出来るのだろう。
衣装箱の奥に隠れながらテツヤは震えながらそう思った。
テツヤが隠れているの寝室の奥にある物置の衣装箱の中だ。
ヤツラが来たという声が聞こえたと思ったら両親に連れてこられ、決して開けないようにと告げられて押し込められた。
しかも簡単に開けられないようにと箱の上に何やら乗せているらしい音がしたので、多分テツヤが開けようとしても簡単には開かないだろう。

そうして聞こえてきた悲鳴と、何かが壊れるような激しい物音。
幼いテツヤが恐怖で動けなくなるのは当然だった。

平和な村だった。
決して裕福ではないけれど自給自足して生きていく程度に作物は実り、村中が親戚みたいに仲が良いこの村は、テツヤが生まれ育った大事な大事な場所である。
都市部から遠いため田舎だとは思うけれどそれを不自由だと思ったことはなく、長閑で温かい気候は住みやすく、そんな場所で過ごしている日々は優しくて大好きだった。

その平和が今壊されようとしている。

鳴り止まない物音と悲鳴。
それがテツヤを愛してくれた人達の命が終わる音のようで、大きな瞳からはとめどなく涙が溢れ頬を濡らしていく。

(父さん、母さん……)

ガタガタと震える身体をどうにか押さえて、テツヤはひたすらに両親の無事を祈る。
これだけの音が聞こえるのだ。無事であるとは思えないが、殺されていたらと思うと怖くて息も吐けない。
生まれた日に授けられたという十字架をしっかりと握りしめ、テツヤはただ祈った。
そうして過ごした時間が半時だったのか、それとも数分だったのか、テツヤには分からない。
驚くほど長く感じた時間は恐怖による錯覚なのだろう。

しん、と静まり返った様子に不安になった。
襲撃してきた何かが去ったのならば、まだいい。
だが両親の声すら聞こえないという現実が、テツヤを更なる恐怖に落としていく。
自分が助かったとしても両親が亡くなってしまったら、テツヤはたった一人になってしまう。
それもまた恐怖だった。
衣装箱の中で俯いたまま、現実を確認する勇気すら持てなかったテツヤは、やがて聞こえてきた物音にビクリと身体を震わせた。
静かな足音はおそらく複数。
ゆっくりとテツヤが隠れている衣装箱へと近づいてきているようだ。
逃げることもできず、テツヤは蓋が開いていくのを怯えた眼差しで見上げることしかできなかった。

「お、はっけーん」

緊迫した空気を破壊するように聞こえた声はひどく明るく、直前まで聞こえてきた惨状とはあまりにも不釣り合いだった。
そこにいたのは2人の青年。
青い髪で色黒の青年と、金髪で琥珀色の瞳をした青年だ。
どちらも驚くほどの美形である。
こんな人物は村にはいなかったと思ったテツヤは、青年の胸元に赤黒い何かが付着していることに気が付いた。
蓋を取り払われて新鮮な空気が肺の中に入ってくる。――その中に感じる鉄の臭い。

「……………ぁ……」

青年に付着しているのが血液なのだと分かった途端、言い知れぬ恐怖が襲ってきた。
彼らが犯人ではないかもしれない。
だが、明らかに殺人が行われただろうこの家の中で、ここまで無邪気な笑顔を浮かべることができるこの男性が恐ろしかった。
差し伸べられた手を、無意識に拒む。
狭い衣装箱の中で少しでも離れようと身じろぐテツヤに金髪の青年が僅かに首を傾げた。

「ほら、青峰っち。この子怯えちゃってるっスよ。青峰っちの顔怖いから」
「うっせーよ、黄瀬」
「ゃ――っ……」

言うなり手を掴んで引きずり上げられた。
大人というにはまだまだ幼いテツヤだが、いくら何でも片腕で持ち上げられるほど軽くはない。
しかも目の前の青年は父よりも年が若く見える。
体格は確かに良いけれど、テツヤの抵抗をものともしない様子で引きずり出す力は驚くほどに強かった。
左肩に全体重がかかってミシリと骨が鳴った。
痛みに呻くテツヤに気づかないのか、青い髪の男性が至近距離からテツヤを見て勝ち誇った笑みを浮かべた。

「あいつら、やっぱり隠してやがった」
「往生際が悪いっスねぇ。隠したって無駄なのに」
「それだけ舐められてるってことだろ」
「うーん、これは躾し直さないとダメってことっスか?」
「生存者がいればだけどな。――まぁ、いいや。目的のモノは手に入ったんだ」

目の前で話されている言葉の意味が理解できない。
感じるのは恐怖。そして今までに味わったことのない威圧感。
青年たちは終始笑顔のままだ。だというのにこの恐怖は何なのだろうか。
青い瞳がテツヤを見る。まるで獲物を見つけた猛獣のように。

「さぁて、少年。一緒に遊ぼうぜ」



それが恐怖の記憶の始まりだった。







◇◆◇   ◇◆◇







悲鳴と共に飛び起きる。
それがテツヤの1日の始まりだ。

あの惨劇の後、テツヤは2人の男にその身を蹂躙された。
10歳の誕生日を迎えてからまだ数日しか経っていない幼い少年を、大の大人2人が好きなように嬲り弄び、そうして意識を失ったテツヤを放置して姿を消した彼らは、その後も事あるごとにテツヤに会いに来ては凌辱を繰り返した。
家族を失い、知人を失い、その身と心に消えない疵を植え付けられたテツヤは、気が向いた時に現れる彼らに好きなように弄ばれる日々を余儀なくされた。
そんな日々から逃げ出したのは無理ないだろう。
両親との愛情が沢山詰まった家も、優しい人しかいなかった故郷の思い出も全て捨てて、テツヤは見知らぬ土地へと逃亡した。
行くあてなどない逃避行。
とにかく彼らから逃げたかったのだ。

そうして落ち着いた新たな村にも、当然のように彼らはやってきた。
以前と同じく村中の人を斬殺し、燃え盛る炎の中でテツヤを蹂躙して、そして瓦礫の山にテツヤを置き去りにして去って行く。
そういうことが何度も続いた。
どれほど逃げても彼らはテツヤを探し出し、そうしてテツヤを庇護した人たちを殺し、散々凌辱し貪り尽くしたテツヤをその場に放置していくのだ。命も奪わずに。

ある時は一面の焼け野原の中に、そしてまたある時は首と胴が離れた死体が溢れる場所に。
自分以外の命が無くなった場所で、テツヤは1人立ち尽くすのだ。

そうしてテツヤは逃げ続ける。
だが、どこかの村に落ち着いた頃を見計らって彼らはやってくるのだ。
戯れのように村人を殺し、食い散らかすかのように血を啜り、建物を破壊し、そうして凍りついたまま動けないテツヤを気が済むまで犯し、打ち捨てる。
その繰り返しが一体どれほど続いたのかテツヤは覚えていない。

そのようなことが続き、テツヤはどこかの村へ身を潜ませることができなくなった。
自分が原因で村が滅びるようなことがあってはならないと、野宿を繰り返した。
だがテツヤはまだ10代前半の少年で、そんな幼気な少年が1人で崩れかけた建物で夜露を凌いでいる姿を見て放っておく大人は少なかった。
人の良い民族性が仇になったとしか言えない。
頑なに固辞するテツヤを強引に連れ帰り、体調が回復するまでとか路銀が貯まるまでとか何かと理由をつけて引きとめられた。
親切心から言ってくれている言葉に断りきれずに世話になることが決まり、そうして数日もすると彼らはやってくる。その繰り返しだ。
いっそのこと殺してくれれば良いのにと思うが、彼らは決してテツヤを殺そうとしない。
死ぬかもしれないという凌辱はこれでもかというほど与えるくせに、絶対にテツヤに「死」という安寧を与えてくれないのだ。
宗教上の教えから自殺を選べないテツヤだったが、それでも思い余って自らの命を絶とうとしたことがあった。
だがその先に待っていたのは、いつも以上に酷い彼らの仕置きだった。

「お前が死を選ぶことは許さない、絶対だ」
「黒子っちが死んだら、魂だけでも永遠に閉じ込めておくっスよ」

どのような手段を使っても逃げられないのだと、行くあてのない放浪を続けながらテツヤは絶望した。
どうすればこのような事態から逃げられるのだろうと思っていたテツヤを救ってくれたのは、生まれ故郷から遠く離れた地方にある小さな教会の神父だった。
広大な領地を持つ領主の先祖がほんの戯れに建てたと言う教会は小さく質素なものだったが、1人の少年を住まわせるには十分の広さがあった。
教会ならば彼らは襲ってこないのではないかと思ったテツヤは、大人しく神父の提案に甘えた。
そうして訪れた平和な生活は、もうすぐ1年になる。
生まれ育った村を滅ぼされてからこれほど長く一か所に留まったのは初めてだった。
長くて半年、短ければ数日のうちに彼らはやってきて、そうしてテツヤに優しくしてくれた人々を滅ぼしていってしまうから。
この土地にやってきてからテツヤが親しくしているのは神父だけだ。
敬虔なクリスチャンである彼は、早朝の礼拝から深夜の祈りまで欠かしたことがない。
そんな彼の傍らで微力だが手伝いをして過ごす日々はとても穏やかで、彼らにおって負わされた心の傷が癒えていくような錯覚すら与えてくれた。
静謐な空気に包まれたこの教会には、おそらく彼らは入ってこれないだろう。
そう思えば、この長い悪夢からもいずれ解放されるのではないかとテツヤは思っている。


それが甘い幻想でしかないということは、数日後に証明されてしまったのだが。


どうしても教会から出られないからという神父の頼みで、テツヤは近くの町へと買い物に来た。
今夜の礼拝で使う蝋燭が足りなかったのだ。
小さな教会だが礼拝者はそれなりに多い。
おそらく神父の人柄によるものだろう。
若いが優秀だと評判の神父らしく、子供から高齢者まで日参してくる人が多いのだ。
特に若い娘が多いのは、神父の外見を考えれば当然かもしれない。
テツヤが今まで会った誰よりも綺麗な顔立ちをしていると思うし、年頃の少女が目を輝かせて神父に憧れを抱くのも当然だろう。
教えられた店に行き、両手に抱えるほどの蝋燭を手にテツヤは教会へと急ぐ。
外出は嫌いだ。
彼らがどこで見ているかわからないし、そのせいで誰かが巻き込まれたらと思うと怖くて人に接することすらできない。
足早に来た道を戻る。
村から離れた場所にある教会までは歩いて30分ほどだが、その距離が非常に長く感じるのはテツヤの体力が落ちているからだろう。
まともな食事も摂れなかった逃亡生活、心を休める時間すらなかったあの日々は、悲しいことにテツヤから成長期を奪ってしまっていた。
もうすぐ16歳になるテツヤは、外見年齢だけで見れば12〜13歳にしか見えないほどに小さく細い。
元々食が細かった上に成長期にきちんとした栄養を取らなかったために、テツヤの身長はあの日からほとんど伸びなかったのだ。
当然筋力もつくはずがなく、テツヤが年相応に見られたことは一度もない。
もっと背が伸びて逞しくなれば彼らはテツヤに興味を失くすのではないかと思ったが、テツヤよりも頭1つ以上背の高い彼らよりも大きくなることは不可能だと思ったので諦めた。
そんなことを思いながら帰路を急いでいたテツヤの視線の先。
見覚えのある2人組の姿がそこにあった。

「……ぁ……」

ひゅ、と喉から嫌な空気が漏れた。
相変らず怖いくらいに整った美貌。
すらりとした身体はしなやかで獰猛な獣のようで。
ひたりと向けられた視線は捕食者そのもの。

「よぅ、テツ」
「久しぶりっス」

絶望に目の前が暗くなった。







   ◇◆◇   ◇◆◇







「ぃ、あぁっ、や、めぇ……」

森の中に引きずり込まれ、手慣れた動作で服を剥かれた。
小柄なテツヤが大人に敵うわけがなく、抵抗らしい抵抗もできずに地面に押さえつけられ、背後から貫かれた。
引き攣れた悲鳴を上げるテツヤを満足そうに見下ろし、容赦なく怒張を捩じ込んだ男――青峰がテツヤの内部を愉しみながらうっとりと息をついた。

「やっぱテツが一番良いな。狭くて熱くて…最高だ」
「ひ…、ぁ…や、ぁ、やめ、」
「泣き顔も可愛いっスし、この顔が快楽に溶けていくのを眺めるのも、また良いんスよね」
「俺らが教え込んだんだから、当然だな。今じゃすっかり後ろだけで快感を得られるようになってるし」
「や、やだぁっ」
「そうそう、奥を抉られるのが大好きなんスよね。黒子っちは」
「そん、なこと、なぃ……っ」

背後から勢い良く抉られ、テツヤは息も絶え絶えになりながらも最後の矜持だけは捨てないと目の前で愉しそうに見物している金髪の男――黄瀬を睨みつけた。
痛みしか伴わなかった凌辱が快楽を伴うようになったのはいつのことか、テツヤは覚えていない。
結構早い段階だったとは思うが、それを認めることだけはできなかった。



「こんな…こんなこと、許され、ない、のに…」



テツヤが信じる宗教では、同性愛は御法度だ。
敬虔なクリスチャンの両親の元で育ったテツヤは、当然のように両親と同じ神を信仰していた。
その神は快楽のみを求める行為を固く禁じていた。
勿論幼いテツヤはこの行為が快楽を求めるものだとは知らなかった。
当然だ。
強引に押さえつけられ男の欲を捩じ込まれ、そして身体の奥の奥まで汚されるような行為が快楽を生むなんて思えるわけがないのだ。
幼い身体を無理やり開かれた時の痛みは今でも忘れることができない。
身体が2つに裂けてしまうのではないかと思うほどの衝撃と恐怖だったのだ。
だからその後どれほど凌辱されようと快楽など得るはずがないのだ。少なくともその心は。
それがわからないのか――否、わかっていて尚2人はテツヤの身体に快楽を刻み付けていく。
嬲るだけ嬲り、溢れるほどの欲を注ぎ込まれて、それでも尚綺麗なテツヤを愛でるのが好きなのだろう。
決して屈服しない生意気な態度が彼らに興味を抱かせているのだということをテツヤは気づかない。
気付いたところで身も心も屈服することだけはないだろう。
だからこそ長年彼らがテツヤを追い続けているのだ。
これほど楽しく美しい獲物が他にあるだろうか。
信仰心が強ければ強いほど、その心を圧し折ってしまいたくなる。

「でも、テツは俺らに抱かれるの好きだよなぁ。こんなにしっかり咥え込んで離さないんだから」
「ぅあ、や、そこっ」
「何度俺らに抱かれたと思ってんスか。黒子っちが悦ぶところなんてよぉく知ってるんスよ」

背後から青峰に貫かれ、前から黄瀬に嬲られ、テツヤは嬌声を押し殺しながら必死に耐えるしか方法がない。
きつく結ばれた唇を黄瀬のそれが優しく触れていく。
慰撫するような動きと正反対な獣のような眼差しがテツヤを翻弄する。
青峰は終始激しくテツヤを苛むだけだが、黄瀬は時に優しく時に意地悪にテツヤに触れてきて戸惑わせる。
恋人に触れるように丁寧に抱く日もあれば、まるでモノのように無遠慮に押し入って己の欲望を解放する日もある。
甘い言葉を囁く時もあれば、冷ややかな眼差しでテツヤの言葉すら封じる時もあった。
彼がどういう人物かテツヤには分からない。
少なくとも青峰と一緒になってテツヤを執拗に嬲っている以上、碌な人間ではないことは確実だ。

「可愛い可愛い黒子っち。早く俺らのものになっちゃえばいいのに」
「だ、れが……っ」
「強情なのも可愛いっスねー。こういう子が快楽に負けて美味そうに俺にご奉仕する姿って最高なんスけど」
「相変らず下衆だな、貴様は。テツみたいな強情な奴は、徹底的に犯して俺なしでいられない身体に改造すんのが愉しいんだろうが」
「そこは俺の手練手管ってやつっスよ。だって青峰っちのテクニックで黒子っち陥落してないじゃないっスか」
「それはお前にも言えることだろうが」
「本当、黒子っちって面白いっス」
「は、ぁ、や、やあぁっ」

軽い会話を交わしながらも、青峰の怒張はテツヤの弱い部分を、黄瀬の指はテツヤの性感帯を的確に抉っており、テツヤは意識を飛ばさないように耐えていることしかできない。
胎内に熱い迸りを感じゆっくりと青峰の怒張が引き抜かれると、テツヤはぐったりと地面に崩れ落ちた。
大人の身体を受け入れるにはテツヤは小柄過ぎて、たった一度の行為でもテツヤの体力を奪い取るには十分だ。
だが、これで終わるわけがない。
それはこの5年という歳月で嫌というほど教え込まされた現実だ。
仰向けに寝転がされ両足を高く持ち上げられ、テツヤは再び襲ってくる衝撃に目を閉じた。
ぐ、と押し込まれる怒張に肺から空気が押し出されていくような気がする。
熱い吐息が耳朶に届く。

「あー、久しぶりの感触。やっぱ、良いっスね」
「うぁ…っ」

ゆっくりと熱を刻み付けるように押し入ってくる怒張にテツヤの顔が恐怖に歪んだ。
何度経験しても慣れることのない異物感と嫌悪感。
そしてそれらを一瞬で払拭する快感にテツヤがいやいやと首を振る。
そんな姿を満足そうに見下ろして、黄瀬がゆっくりと抽挿を開始した。







   ◇◆◇   ◇◆◇







長い、長い凌辱の時間が終わったのは日もすっかり落ちた夜になってからだった。

「またね」
「良い子で待ってろよ」

額に、頬に、優しく唇を落として去っていく男の気持ちが分からない。
また、ということは次もあるのだ。
いっそのこと殺してくれればいいのにとテツヤは汚れきった身体を投げ出して思う。
夜風が裸の身体に吹き付けて寒さを感じたテツヤは、ミシミシと音が鳴りそうなほど強張った身体をどうにか動かして近くに放り投げられていた衣服に手を伸ばした。
そしてその隣に転がっている蝋燭の箱を見てため息をつく。
もう夜の礼拝は終わっているだろう。
珍しく頼まれた遣いすらまともに勤め上げられなかった自分が情けない。
教会に残っていた蝋燭で間に合っていればいいのだが。
そんなことを考えてしまうほど、テツヤは自分が汚されたことを気にしていなかった。
もう幾度も汚された身体だ。
今更嘆くことも怒ることも、そして恥じることもできないほど麻痺してしまった。
上着の一枚を犠牲にして男たちの残滓を拭い、不自然にならないように服を羽織った。
どうやら今回は乱暴に剥ぎ取らなかったらしく、服の合わせ目も破れていないようで助かった。
ここから教会まではまだそれなりに距離があるので、いかにも強姦されましたという恰好で歩くのは周囲の目を考えると好ましくない。

(そういえば…)

決して人通りが多いとは言えないが、教会まで続くこの一本道を通る人は皆無ではない。
まして今夜は礼拝があったのだから通行した人がいてもおかしくないのだが、少なくともテツヤにはこの道を誰かが通った記憶はない。
道から少し離れた距離だとはいえ人の気配ならわかりそうなものだし、通行人にもテツヤの悲鳴は当然聞こえていたはず。
だというのに誰1人として踏み込んでくる様子はなかった。
不思議だと思ったが、どうせ彼らが何か手を打っておいたのだと解釈した。
正体不明の2人の男性が一体何者なのか、テツヤは知らない。
最初こそ強盗の類だと思ったが、それにしては武器らしい武器を持っていないのだ。
他に仲間を誘導している様子もなく、村を壊滅させても物品を略奪していくでもない。
村の自警団をたった1人で全滅させるほどの実力、どこへ逃げても追いかけてくる執念。
そして、出会った時から少しも変わらないその外見。
何もかもが不自然だったが、確認する方法などなかったので無視してきた。

おそらく人間ではないだろう。
確認したわけではないが、ただの人間が出来るような所業ではないことはテツヤが誰よりも知っている。
逃げ場所に教会を選んだのも、人間でない異形の存在ならば神を恐れるだろうと思ったからだ。
それが事実かどうかわからないが、今回の彼らはテツヤが教会から出た所に姿を現わした。
いつもなら建物を吹き飛ばすくらい平気でするのに。

どちらにしろ、テツヤの居場所が彼らに見つかってしまった以上、このまま神父の好意に甘えるわけにはいかない。
一刻も早く出ていかなければならないだろう。
本当ならばこのまま姿を消すのが良策だとわかっているが、世話になった以上お礼だけは告げておきたいという気持ちが勝って、テツヤは痛む身体を推して教会へと戻った。
自室に戻り服を旅装束に着替え、部屋にあった羊皮紙に世話になったこと、予定が出来てすぐに出ていかなければならなくなったことを書いて、蝋燭と一緒に祭壇の上に置いた。
神父の姿がないのは幸いだった。
事情を説明する勇気がどうしても持てなかったからだ。
名残惜しそうに礼拝堂を一瞥し、そしてテツヤは出口へと足を向けた。
すると――。



「黙って出ていくなんて水臭いな、テツヤ」



誰もいないと思っていた礼拝堂に聞きなれた声が響いた。
テツヤは慌てて背後を振り返る。
祭壇の前、つい先程まで確かにいなかった場所に神父が立っていた。

「神父様……」

赤い髪と黒いカソック服が対称的な青年は、まるで最初からそこにいたかのように悠然と佇んでいた。
左右色違いの瞳がテツヤを見据える。
常に微笑みの形を崩さない口元がやんわりと弧を描いた。
その瞬間にゾクリと背筋を這ったのは何だったのだろうか。
無意識のうちのテツヤは一歩後ずさっていた。
目の前にいるのは親切で誰からも尊敬されていて、困った人を放っておけない優しい神父――赤司征十郎。
傷つき疲弊したテツヤを匿い、優しく癒してくれた神父のはずなのに。

「どうしたんだい、テツヤ。まるで『悪魔』にでも会ったような顔をして」
「っ!!」

逃げようとした足が縫い止められたかのように動かない。
そんな馬鹿なとテツヤは思う。
目の前にいるのは神の使いである神父。
だというのに、何故彼らに抱くのと同じ恐怖を感じるのだろうか。
彼は――。
茫然とするテツヤを前に、神父――赤司はくつくつと哂う。
今朝までの人好きのする笑顔とはまるで正反対の、残虐性を伴う笑顔で。

「ねぇ、テツヤ」

優しい声音が耳朶を打つ。
だというのに冷や汗が背筋を伝って落ちていくのはどうしてだろうか。
赤司はそんなテツヤの反応を愉しそうに見ている。
そうして一歩、テツヤへと歩み寄った。

「君は何度彼らに抱かれたか覚えているかい?」

まるで聖書を紡ぐかのようにテツヤの忌まわしい記憶を引きずり出す。

「10歳の時からずっと彼らに犯され続けた君だ。何度その身に彼らの精を受けたか知っているかい。何度涼太と大輝が君のナカに欲望を吐き出したか、覚えているかい?」
「………あ……」
「流石に回数は数えていないか。では、教えてあげよう。可愛い可愛い僕のテツヤ」

更に一歩、近づく。
決して広くない礼拝堂で、テツヤと赤司の距離はあと10歩もない。
赤司は笑顔のまま右手の指を1本立ててみせる。

「おめでとう。先程でちょうど100回だ」
「……あ、なたは…っ」
「そう、僕はわざと君を涼太と大輝に襲わせるために町へ買い物を頼んだんだ。おかしいと思わなかったかい? 礼拝で使う蝋燭なんてたかだか10本だ。しかも先月買い換えたばかりで交換する必要なんてない。なのに何で頼むのだろうと、少しでも不思議に思わなかったのだとしたら、僕の演技も捨てたものじゃないね」

くすくすと笑いながら、赤司はゆっくりと進んでくる。
カツン、カツン、と響く靴の音が死刑執行の合図のように聞こえるのは気のせいだろうか。

「ねぇ、テツヤ。悪魔の精を100回も受けたんだ。我々の眷属となる資格は十分だと思わないかい?」
「な、に…を……」
「僕は、ずっと君を探していたんだ。神の祝福を受けて生まれるという水色の髪と瞳を持つ子供。黒子テツヤをね。本当はすぐに連れてきたかったけれど、人一倍穢れに弱い君は、魔王である僕が触れたら死んでしまう危険があった。だから大輝と涼太に穢してもらったんだよ」

綺麗で純粋で、そして誰よりも穢れに弱い君を僕の元に誘導するのは中々骨が折れたよ、と赤司は笑いながら言う。

「君の心は思ったよりも強靱で、どれほど多くの人間を殺されても、どれほど辱めを受けても決して屈服しなかった。称賛に値するね。今までここまで耐えた人間はいなかったんだが。こんなに小さくて華奢で弱いのに、君は本当に凄いよ」
「ふざけ――」
「残念だが、遊びはここで終わりだ。準備は既に整っている」

残っていた歩幅を一瞬で縮め、赤司は驚くテツヤの動きを封じその唇を奪った。
柔らかい舌を絡め、腔内を思う様蹂躙し、己の唾液を口移しで流し込む。
テツヤのか細い抵抗など、赤司の前では児戯にも等しい。
コクンと嚥下する音を聞いて、赤司はテツヤの襟元を寛げていく。
露わになる白い肌には先程青峰と黄瀬がつけた情痕が花弁のように散らばっている。
白い肌と赤い色。
それはとても背徳的で赤司の好みでもある。
ゆっくりと動く指先にテツヤの身体が細かく震えた。
この後の展開に怯えているのだろう。
散々男に凌辱されたばかりだ。
そう思うのも不思議ではない。

だが、そう他人の思う通りに動く赤司ではない。
形の良い指先がテツヤの胸に触れる。――正確には心臓の真上に。

「あ、あぁっ、うあぁぁぁ!!」

触れられた先から感じる熱に悲鳴が上がる。
熱い。灼けるような熱に逃げようと身じろぐが、軽く抑えているとしか思えないのに身体はびくともしなかった。
ほんの数秒。
触れていた指が離れた。
慌てて触れてみればそこには何もなく、あれほど苛んだ痛みも熱も既に消えていた。

「な、に――」
「印をつけたんだ。君が僕らのものだという証をね」

マーキングというやつさ、と赤司は何でもないことのように言う。
そしてテツヤの水色の髪をかきあげ、労わるように微笑んだ。



「おめでとう、テツヤ。君は今から僕たち『キセキ』の永遠の虜囚だ」



  • 13.04.06