パチリ、と黄瀬は目を覚ました。
学生時代から早起きは得意なため、午前5時になると自然に起きてしまうのだ。
それはどんなに遅く寝ても変わらない。
それではどうして毎朝テツヤが起こしに来るまで寝ているのかと聞かれれば、そんなの可愛い可愛い(以下略)息子に「父さん、起きてください」と言われるのが楽しいからだ。何か問題があるだろうか。
そんなわけで黄瀬は至極爽やかに目覚めた。
腕の中には可愛い息子。兼、恋人。
お互い全裸なのは、まぁそういうことだ。
相変らず細い身体を巻き込むように抱きしめていた黄瀬は、すうすうと穏やかな寝息を立てる愛息子の寝顔を間近で堪能するこの時間がお気に入りだった。
顔立ちは母であるテツナに瓜二つ。
だというのに黄瀬は学生時代からテツナに対して友情以上の気持ちを抱いたことがなかった。
可愛いとは思っていたし実際かなり懐いていた自覚はあるけれど、では付き合いたいかと聞かれれば微妙なところだ。
付き合うことは可能だろう。
キスもそれ以上も、する気になればできなくはない、と思う。
だけど、最終的に彼女に抱く気持ちは友情以外の何者でもなかった。
だというのに同じ顔をしたテツヤに対しては驚くほど欲情している自分がいるのが不思議だった。
生まれたばかりの彼を知っている。
おむつを替えたことだって何度もある。
ハイハイを覚えた時の嬉しさは一入だ。
そうして成長を見守りながら一緒に日々を過ごしていき、気が付いたら彼に恋をしていた。
友人と同じ顔立ちの、自分と同じ性別を持つ男の子であるテツヤに。
どういうことなのだろうと自分でも思う。
親子ほども年の離れた関係で、しかも今では本当の親子だというのに、黄瀬はテツヤが愛しくて仕方ないのだ。
それはかつてテツナに抱いていた感情とは全く違う。
テツヤに触れてその肌を堪能して、テツヤと1つになりたいと強く渇望する、紛れもない情欲を伴った恋情なのだ。
親子という関係、同性という禁忌。今後の仕事への影響。
それら全てを計りにかけて、それでも黄瀬はテツヤを手に入れたいと願った。
禁忌など何が問題あるのだろうか。
つい二百年程前ならば男色など珍しいものではなかったではないか。
全てにおいて寛容な日本の民族性は古来から同性愛についても寛容で、明治の初旬には男性が身体を売る陰間茶屋とて残っていたのだ。
何がいけないというのか。
そう思った黄瀬は己の感情を抑えることを止めた。
仲良し親子という関係に終止符を打つために決めた旅行。
黄瀬はあの時強引にでもテツヤを自分のものにするつもりだったのだ。
受け入れられるとは思っていなかった。
テツヤが自分に向ける思慕は家族愛だとばかり思っていたから。
最大の誤算はテツヤが自分と同じ気持ちを抱いていたことか。
おっとりとしたテツヤらしく気づいたのはあの時だったようだが、黄瀬にとってはテツヤが自分を受け入れてくれたということだけが全てだ。
初めて運命というものに感謝した。
この可愛らしくも愛しい子供と出会わせてくれて。
そして彼が自分を愛してくれて。
まるで一生分の幸福を使い切ってしまったかのような僥倖。
だけど、黄瀬は一度手にした幸福を手放すほどお人よしではない。
「テツヤっち」
眠るテツヤの額にそっと口づける。
黄瀬を選び黄瀬の手を取ったテツヤは、その爪の先まで黄瀬のものだ。
誰にも渡さないし、何が起ころうとこの手を離しはしない。
健やかな寝息を立てる唇にも触れる。
ふに、と柔らかい質感は何度触れても飽きることはない。
柔らかい唇を堪能し、滑らかな背中をゆっくりと撫で上げる。
「ん…っ」
小さな吐息がテツヤの唇から洩れてくるのが愉しい。
しっとりとした肌の感触を味わいながらまろい尻へと移動させていく。
秘所に指を忍ばせれば、つい数時間前の行為のせいでそこはすっかり綻んでいた。
指先で弄ぶように入口を突き、するりと2本の指を挿入すれば無意識に締め付けてくる。
テツヤが悦ぶナカを掠めるように抉りながらゆっくりと指を動かしていけば、眠ったままだというのにテツヤの下半身は素直な反応を見せた。
もう片方の手で平たい胸を弄ってみれば、唇からはあえかな吐息が零れてくる。
黄瀬が教えて己の好みに染め上げた身体は、順調に開発されているようだ。
無垢で何も知らなかったテツヤに快楽を教え込んだのは黄瀬だ。
黄瀬の指に反応するように、丹念にその身体に快楽を刻み込んだ。
未知の快感に怯えながらも大人の手練手管に陥落していく姿は何とも淫らで愛しかった。
テツヤが己以外を見ないように、愛情と同等の悦楽をテツヤに教え込んだ。
他の男は勿論、女などにも奪われないように、徹底的に「黄瀬涼太」という雄を刻み付けたのだ。
黄瀬の望むままに反応し、黄瀬にだけ欲情する可愛らしいテツヤの完成である。
「ぁ、ん…っ、ふ…ぅっ…」
「可愛いテツヤっち。すっかりいやらしくなっちゃって」
入口を弄る指の動きに物足りないとでも言うように腰が淫らに揺れている。
眠っているからこそ素直な反応に、黄瀬はゆるゆると指を押し込んでいく。
「ひ…ぁ………っ、やっ、何…父さ、ん…?」
「おはよう、テツヤっち」
「おはようございます、って…何やってるんですかっ」
「んー、愛の営み。テツヤっちが可愛いのがいけないんス」
前立腺を掠めるように動かしたせいで流石にテツヤの目が覚めたしまったが、すっかり臨戦態勢になってしまった黄瀬に今更止めるという選択肢は存在しない。
だってテツヤが可愛い反応を見せるからいけないのだ。
もっとと強請るように腰を押し付けてくるから、こちらだってそれに応えようと思うのは当然ではないか。
まだ完全に目覚めていないテツヤの足を抱えて、黄瀬は己の怒張をテツヤの後孔に捩じ込んだ。
「やっ、違うでしょ…っ。あぁっ」
「あー、相変わらずきつ…っ」
きちんと解しておいたから痛みはないはずだが、やはり寝起きの衝撃というのは大きかったらしい。
ただでさえ狭いテツヤの内部はきゅうきゅうと締め付けてきて、黄瀬に快感と同時に痛みをも与えてくる。
だがつらいのは自分よりテツヤだろうと、黄瀬はテツヤの腰や胸を丹念に愛撫して身体の力を抜かせた。
こうなったら抵抗するだけ無駄と判断したのか、それとも与えられる愛撫に身体が蕩けたのか、テツヤの内部から力が抜けていくのを感じて黄瀬はゆっくりと律動を再開させた。
どこを抉ればテツヤが蕩けていくかなんて、ここ数日ですっかり開拓済だ。
「父さんの、馬鹿ぁ…っ」
「ごめんね。でも、テツヤっちが美味しそうだったから」
「あっ、やぁ、そこ駄目ぇ……っ」
「どこが駄目なの?」
「やぁ…、奥…ぐりぐりしないでぇ……」
「だってテツヤっち、奥突かれるの好きでしょ」
「あ、あぁ、おかしく…なるぅ…っ」
指では決して届かない奥を抉られてテツヤが恍惚の表情を浮かべる。
とろんと蕩けた眼差しは何とも言えず淫らで、何とも言えず黄瀬の好みでもある。
女では決して与えられない快感を、無垢な身体に刻み付けた。
テツヤが快感を感じる全ての場所は、女では決して与えられない身体の奥深くにある。
単なる射精では得られないほど強い刺激を教え込まれた身体は、最早黄瀬以外では満足できないだろう。
深く奥を抉り、赤く色づいた乳首を愛撫する。
甘い嬌声を愉しみながら、黄瀬は淫らで可愛らしい息子の艶姿を心行くまで堪能した。
出発の時間に大幅に遅れた黄瀬がマネージャーに踵落としを喰らったのは当然だろう。
◇◆◇ ◇◆◇
新しい関係になったからと言って何が変わるわけではないと思っていたが、テツヤが予想だにしなかった弊害が起きた。
当然というか長かったプラトニックの期間(と呼ぶには過剰すぎるスキンシップではあったが)がようやく解禁になったということで、黄瀬が毎晩のように求めてくることだ。
嬉しくないわけではない。
だけどはっきり言って体力的な問題でテツヤは黄瀬を受け止めきれないのだ。
今朝も今朝とてがっつり美味しく頂かれてしまったせいで、テツヤの休日はあと数時間しか残されていない。
昨夜も帰ってくるなり散々貪られて寝たのが朝方だったというのに、その数時間後にまたもや襲われてしまったので僅かに残されていたHPは限りなくゼロに近くなってしまい、大満足した黄瀬が仕事に出かける時にも熟睡というよりは昏倒といった状態で眠りについてしまい見送ることすらできなかった。
そうして食事も摂らずに爆睡すること数時間、ようやく腰の痛みを我慢すれば起き上がれるまでに回復したのだが、流石に食欲まで復活しているはずがなく、テツヤはホットミルクを飲んだだけで再びベッドに沈み込んだ。
せっかくの休日がこんな形で終了して良いのだろうかとテツヤは思う。
これって健全な高校生の生活じゃないよなとは思うものの、テツヤにとって健全な高校生の生活とはどういうものか良くわからない。
誰かに愚痴を言いたいけれど、相談できる相手が赤司しかいないのでとてもじゃないが話すことなどできるはずもない。
どうせ良い笑顔で「仲が良くてなによりじゃないか」と言われるに決まっている。
応援と冷やかしが9:1の割合で含まれている赤司の言葉に更に気力が奪われるだけなのだ。
「まったく、面倒な人を好きになったものです」
嘆くけれど後悔はない。
全身全霊でテツヤを愛してくれる人が目の前にいる。
それを嘆く必要などあるだろうか。
今は想いが通じたばかりだから求めてくる頻度も多いだけで、あと数か月もすればそれなりに落ち着いてくれるだろう。
何しろ黄瀬は30代半ば。
血気盛んな中高生のようにはいかないはずだ。
そう思えば怒涛の求めも何とか耐えることができそうだ。
テツヤは再び襲ってきた微睡に大人しく身を委ねながらそう思った。
だがしかし、テツヤの予想に反して黄瀬は相変わらず絶好調だった。
しかも惚れて弱みかテツヤもとことん拒みきることができず、とうとうあまりの衰弱ぶりを見かねた赤司により「テツヤに触れるのは週に2回まで」と言い渡されるまで黄瀬の暴挙は続き、テツヤにとっては嬉しくも苦しい日々が続くことになるのだが、知らぬが仏とはこのことか、穏やかな眠りについたテツヤが知るのはもう少し先である。
- 13.11.23