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トラブルは突然に


こんにちは、跡部です。
氷帝学園に入学してからひと月と少し。
何とか無事に学生生活を過ごしています。
というのも、ワタクシ身体が弱い(という大義名分の元、両親が手元から離したがらなかった)せいでイギリスで小学校というものに通っていなかったのです。
貴族階級では特に珍しくないらしく、家庭教師がついていたので学力で劣ることはないのですが、如何せん団体行動から離れて12年(えぇ、今生の人生まるまるです)。
どうなるかなぁと思ったけど何とか無事に過ごせているようです。
勿論、『跡部景吾の妹』という肩書のお陰でもあるようですが。
そんな学園一有名な景ちゃんの妹ということで、入学してからずっと視線が痛いです。
特に女子生徒。
確かに憧れの人が妹とは言え女性の手を引いて車から降りてくるわ、お昼のたびに迎えにくるわ、人目を憚らずにハグやらキスやらやらかしてくれる日には、内心面白くないでしょう。えぇ、そうでしょうとも。

でも私だって不本意なんだと言いたい(言えないけど…嫌じゃないけど…むしろ嬉しかったりして)。

ここ数日、女子生徒(特に先輩方)の視線がとんでもなく鋭いような気がするので、何となく嫌な予感はしてたんですよ。
何って呼び出しです。
女の嫉妬は怖いというじゃないですか。
だから、上級生のお姉さま方にずらりと取り囲まれても仕方ないなと思うのです。
勿論大人しくやられるつもりは毛頭ありませんが。
でもいらぬトラブルは起こさないのが吉なので、極力1人にならないようにしてました。
登下校は景ちゃんと一緒、休み時間は景ちゃんもしくはお友達と一緒。
なるべく教室を出ないようにしていたので、呼び出されることもなく日々を過ごしてたのですが…。

「あなたが跡部様の妹さんね」
「…はい」

終業直後の教室に団体さんでお迎えが来るのは予想外でしたよ。
こういうのって人目のない場所を選んで来るものじゃないんですか?
HRが終わったばかりだから担任もまだ教室にいるというのに、なんというチャレンジャー。

「ふぅん」

ノーメイクでも十分美人さんだと思う先輩が、腕組みしたまま上から下まで眺めてます。
何でしょう、「こんな女が跡部様の妹?」とか思ってるのでしょうか。
一応外見はそれなりに良いと思うのですが(中身はおっしゃる通りです)。

「私たち、あなたとゆっくり話がしたいの」

やっぱり。

「申し訳ないのですが、これから予定があるので無理です」

今日はこの後ヴァイオリンのレッスンがあるんです。
久しぶりにカレン先生が日本に来ているので、集中的にしごかれる予定です。
遅れたらどんな無理難題を押し付けられることか…(ガタブル)。
それなのに。

「大丈夫よ。あなた次第ですぐに終わるわ」

目の前の先輩がそう言うと、両脇にいた別の先輩ががし、と両腕を掴みました。
あ、嫌な予感。

「ここじゃ何だから場所を移動しましょうね」
「え、あの…ちょっ…」

ずるずると引きずられて抵抗すらできません。
女の馬鹿力って侮れないんですね。ピクリとも動きませんよ。

とりあえず誰かに救いを求めるように周囲を見回すと、教室の端にテニス部員の同級生が。
真っ青な顔をしていた彼は、私と目が合うなり脱兎の如く走り去っていきました。


あ の 野 郎 、 逃 げ や が っ た 。


さて、どうしましょう。


  • 11.06.13