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拒否権? そんなものありません


皆様こんにちは。
跡部5歳です。
なし崩し的にヴァイオリンを習うことになったわけですが、これがまたやってみると非常に楽しいものでした。
前の人生では18年間ほぼテニス三昧だったために音楽なんて高尚な趣味はなかったので、せいぜいリコーダーができる程度だったのですが、流石は跡部家DNA。
基礎習い始めて半年で曲が弾けるようになりました。

びっくりするほどの上達ぶりだと思いません?
何せヴァイオリンはピアノと違って叩けば音が出るものじゃないですし、弾く姿勢や弦の角度や指の置き方などがきちんとしていなければ耳を覆いたくなる不協和音しか出ないという厄介な代物だけど、私が弾くと何故か音になるんだなこれが。
何でしょうかね、転生トリップの特典というやつなのでしょうか。
だったら私は恵まれすぎてますね。
何しろ日本でもトップクラスの財閥の家に生まれて、家族は優しく兄は跡部景吾で、しかも外見は母譲りの美貌とくれば、その後の反動がどかんとありそうで怖いです。
わ…私短命だったりするんだろうか…(滝汗)。

…とりあえず今のところは不都合がないので気にしないことにします。
いつか来るかもしれない不幸に備えて今ビクビク生きるなんてまっぴらですからね。

『人生は前向きに楽しもうじゃないか』

これが生まれる前からの私の格言です。

さて、そんなわけで音が奏でられると俄然楽しくなるのが音楽というものらしく、私の1日はほぼヴァイオリンの練習に割り当てられます。
丁度景ちゃんもテニスを始めるようになったために時間を持て余していたせいか、いやもう頑張る頑張る。
といっても退屈でも面倒でもないので気が付いたら結構な時間が経過しているというパターンがほとんどです。
時間の許す限り練習して、夜には景ちゃんに今日覚えた曲を披露するというのが日課になってます。
は天才だ」って褒めてくれる景ちゃんがべらぼうに可愛くて、その笑顔が見たくて練習に励むというスパイラルです。

それにしても音楽って楽しい。
前の人生でとことん回避し続けていたのが勿体無いくらいです。
もう少しヴァイオリンに余裕が出てきたらピアノも教わる予定です。
どうしても弾きたい曲があるんですよね。
超絶技巧曲らしいので挑戦のし甲斐があります。
でも、まずはヴァイオリンです。
いつか先生と合奏できるようになるのが目標なのです。
中学生になるまでに合奏できるといいなぁ。



とか思っていたのですが。



「…えと、あの、先生? わたし聞きまちがえてませんか?」



本日の練習後、今日も良く弾けたわねと全開の笑顔を見せてくれた先生にありがとうございますと笑顔を返したその後に言われた言葉の内容が、残念ながら私の頭では理解できません。
あれれ? 何だろう幻聴かな。
今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような…というかむしろ聞いちゃいけない単語が聞こえたような気がするのですが。

「聞き間違えじゃないわよ。来週のコンクール、申し込みしておいたから」

メイドさんが持ってきてくれた紅茶を一口飲んだ先生は笑顔のままです。
相変わらず美人。でも言ってることはとんでもない。

「先生! わたし、まだ習いはじめてまだ1年!!」

がばっとテーブルに身を乗り出したせいでカップが倒れました。
あぁっ、いけない。紅茶が。
わたわたしているとメイドさんがやってきてテーブルの上を綺麗に片付けてくれました。
洋服にちょびっとだけ紅茶がかかって白いワンピースが汚れちゃったけど、とりあえず着替えるのは後。
まずこっちのが先です。
あらあらまあまあなんて呑気に笑ってないでください。
流石お母さんの親友なだけあって笑い方がそっくり…っていやいやそんなこと今は関係なくて。
確かに美人でおっとりしているように見えるのに強引なところがあるのは事実だけど(何せ拒否権なくヴァイオリン習わされた)、でも普通ヴァイオリン歴半年の初心者にコンクール参加とかさせようと思わないですよね。
え? 何これ。何のいじめ?

「だってちゃん、予想以上に上達早いんですもの。だったら皆に披露しなかったら勿体無いじゃない」

それ、大いに激しく違いますから。

普通初心者のお子様がこんなに上達しましたよと披露したいなら発表会程度なんじゃないの。コンクールって何?
しかも国際ヴァイオリンコンクールって、絶対に小さくないですよね?
むしろ世界規模ですよね?
しかもカナダってどんだけ大きな大会に出させようとしてるんですか。
私まだ5歳でヴァイオリン触って半年しか経っていない初心者ですよ。
無茶って言うか無謀って言うか、身の程知らずにも程がありますってば。
え? 何これ。何のいじめ?(2回目)

「あら、大丈夫よ。紹介状も書いたし書類選考は通過してるから」

皆さん。
テニプリの世界の大人達は私の意見なんて聞いてくれません。

ということでいつの間にか荷造りが終わっていたらしく、私は先生と一緒に翌日の朝早くにカナダへと旅立たされたのです。
明るい笑顔で見送る両親の横で最後まで反対してくれた景ちゃん。
私の味方は君だけだよ。


ということで、甚だ不本意ではありますが行ってきます。


  • 10.10.20